少年ストリート(団地)ギャング対エイリアン。
SFホラーの変化球。
低予算のB級エンタメだが、評判の良さに違わず快作だった。
11年も前の映画だったか。
どおりでボイエガが幼く見えるわけだ。
ボイエガが団地育ちのガキ大将にぴったり。
強盗したり大麻を売ったり立派なギャングだが。
単なる変化球だけでなく、社会派なテーマも上手く機能していた。
低予算を逆手に取ったブロック(団地)という限定空間。
その窮屈さ、世界の狭さが彼ら少年ギャングの息苦しい環境そのもの。
彼らにはそこが世界のすべて。
ガーナで人道支援する善人に対し
「イギリスの子供は助けないのかよ」
と痛いとこをつく少年。
黒人を殺すためにエイリアンを送り込んだとバカバカしい推理をするボイエガ。
「黒人同士の殺し合いにしびれを切らしたんだ」
そこには彼らの社会に対する諦めや絶望が根を張っている。
鋭い指摘が心を抉る。
警察が人食いエイリアンと同じくらい怖い存在なのも笑えるようで笑えない。
彼らがあくまで子供であると突きつけるクライマックス手前のある場面。
多くを語らず考えさせる本作の白眉。
彼らはまだ子供。
貧困や差別、虐待によって団地という煉獄に縛られている。
我々観客も目を開かされる。
彼らの強盗被害者だったキャラクターが見せる変化と行動。
彼らを排除しようとした人々のモーゼスコール。
細やかでありきたりかもしれないが救いを感じた。
悲しいが現実ではこんなことはそう起きないだろうから。
エドガー・ライトやニック・フロストの名前通り脱力感のあるブラックコメディでもある。
ハッパ吸ってるだけで散々な目に合う大学生が特に情けなく不憫で笑えた。
そんな彼にも活躍が与えられるように、キャラクターも大事にされている感じが好感。
エイリアンの設定とかもう少し見たかった。
アクションも頻度は少ないが頑張っていて飽きない。
終盤のアツい展開も短いが楽しめた。
低予算でかなり頑張っている。
しかし、さすがにチープなところや荒さも気になる。
そうしたエンタメとしての弱点をカバーするキャストとスマートな演出。
オリジナリティ。
メッセージ性。
ジョー・コーニッシュのこれからに期待。