Qちゃん

卒業のQちゃんのレビュー・感想・評価

卒業(1967年製作の映画)
3.7
当時この映画観た時は、久々に「この映画、今このタイミングで観てよかった」って思った。なんかすげーー主人公ベンジャミンに共感した。怖いことに。

学生時代は楽でいいんだよ。何も考えなくても与えられた目標があるから。首席さえ取れば目標達成。

でも、人生は違うんだよね。これまで培ってきたものなんか関係ない。決まった目標がなくなれば、たちまち見失ってしまう。気の向くままに気持ちいい楽な方に流されたり、思考が停止したままブラブラしたり。そこで突然ちょっとした目標が見えると、後先考えず突っ走る。

ゆらゆらと波の上で流れのままに揺れ、自分の方向性も居場所も定まらない、学校という自動システムからも親という束縛とリードからも卒業した、不安定な若者たち。そういう意味ではエレーンもベンジャミンも一緒。

この有名なエンディング、想像と違って見せ方が凄い良かった。式場では互いに状況に酔っててドラマティックな気分になってるから、はちゃめちゃして逃げ出すわけだけど、バスに乗ってひと段落ついた時、二人の表情は、ロビンソン夫人と情事重ねてフラフラ惑ってた時のベンジャミンと同じ表情。ただ、一人で惑っていたのが、二人で惑うことになっただけ。

しかも暴行、傷害、侵入、誘拐、家庭崩壊、親たちの関係の崩壊、エレーンは結婚の誓いを交わした後なので契約反故も含め、この後待っているのは泥沼だけ。映画「小さな恋のメロディ」のような一種のメルヘンでは済まないところが、逆にこの映画の良さで、本作を名作にした所以。

中身とは別途に、映画の撮り方や見せ方も斬新でカッコいい!67年の映画とは思えん。サイモン&ガーファンクルの名曲も、あのフワフワした感じがなんとも映画の雰囲気に良く合ってた。
Qちゃん

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