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ビルマVJ 消された革命のodyssのレビュー・感想・評価

ビルマVJ 消された革命(2008年製作の映画)
4.5
【命がけのドキュメンタリー】

(2010年にロードショウで上映されたときに某映画サイトに投稿したレビューです。某サイトは現在は消滅していますので、ここでしか読めません。時間の経過をふまえてお読み下さい。)

まさに命をかけて作られたドキュメンタリーである。

小型カメラやデジタル映像機器の発達がこうしたドキュメンタリーを可能にしたわけだが、それでも言論の自由が存在しない軍事政権下のビルマでは、撮影側に多大な危険性がついてまわる。

撮影しているところを政府側に発見されれば機器類の没収だけでは済まず、刑務所にぶち込まれる可能性が大だからだ。

また、政府軍が仏僧や市民のデモを鎮圧しようとして発砲するところを撮影すれば、撮影者も下手をすると銃弾の犠牲になりかねないのである。

本作品はそうした危険性を犯してまでもビルマの現実を世界中の人々に知ってもらおうとする熱意と勇気の賜物である。実際に撮影者側にも犠牲者が出た模様。

映像の迫力は実際に見て体験してもらうしかないが、デモを行う仏僧や市民を蹴散らそうとする政府軍の様子や、日本人ジャーナリスト長井健司氏がデモの現場を撮影していて政府軍に射殺されるシーンが生々しく捉えられている。

世界中で多数の賞を受賞したのも当然と納得の一本。未見の方には是非ご覧いただきたい。

アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞が本作に与えられなかったのは、まさにアカデミー賞を選ぶ側の不見識を示すものだろう。イルカを特殊な動物を信じ込みアジアの地域社会をイジメるだけの『ザ・コーヴ』に賞を与えたアカデミー賞選考者は、自らの愚かさを歴史に刻んだと言える。
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