この映画で描かれる徹底して低徊する人生経路は、怪物シュトロハイムの裏返しのダンディズムである
エリッヒ・フォン・シュトロハイム
『グリード』
エリッヒ・フォン・シュトロハイムの暴君エピソードは死後66年を過ぎた今でも色褪せてません。
そして元々は9時間の上映予定だったとされるサイレント映画『グリード』で描かれる、表皮を剥いだ身も蓋もない愚劣な生き様も公開から間もなく100年目を迎えようとしているのに、その迫力はいまだ観る者をしてたじろがせます。
自分をこれ以上にないくらいに押し上げ続けた素顔のシュトロハイム。
そして自分をここ以下はないところまで切り下げた『グリード』の主人公マクティーグ。
どちらにも通底しているのは、誰よりも確固とした場所に居ようとするダンディズムの結晶というべきもの。
最近知ったエピソードですが巨匠ビリー・ワイルダーは名作『サンセット大通り』の撮影中、尊敬するシュトロハイムに演出相談をしたそうですが、やがては演出そのものが乗っ取られる恐怖を覚えシュトロハイムと距離を置いたそうです。