クシーくん

ビッグケーヒルのクシーくんのレビュー・感想・評価

ビッグケーヒル(1973年製作の映画)
3.2
原題は「ケーヒル 連邦保安官」なのに「ビッグ」を付けてしまった所為で良くも悪くも黄金期の西部劇的大らかさを纏った雰囲気になってしまった。

二人の子供を持つやもめの保安官ケーヒル(ジョン・ウェイン)と反抗期の子供達との葛藤と親子愛を描いた地味だがなかなか趣のある佳作。

扱うテーマは ジョン・ウェインの存在感が強過ぎるせいか、矢張りどう頑張っても全体的には昔ながらの西部劇とさほど変わらない。60年代を経て西部劇の衰退からマカロニの流行を経てもなお変わらない作品を送り出してくることに強い矜恃を感じると同時に変な安心感すらある。

実父のジョン・ウェインとアウトローの悪党ジョージ・ケネディという2人の父親が登場する。頑固で保守的だが、本当は家族想いの父が、ボヘミアンな悪の導き手から子供を守るという図式は西部映画を好む層の当世への心情が込められているというのはちょっと穿った考え方かな。子供の反抗と独立をキチンと描ければ、面白いかは別にしてそれはそれで果敢な挑戦だったろうが、デュークが存在感もたっぷりに出しゃばるので結局家父長制の復権を謳う予定調和に落ち着いてしまった感はある。特にラストはご都合的結末を迎えてしまうのはちょっと頂けないが、マーロウの言葉を借りるなら「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きている資格がない」と言った所だろうか。

時代性か時折60〜70年代風のフォークソングが挿入されるのだが、悲しいかなジョンウェイン主演のオールドスタイルな作風と絶望的に合わない。
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