大道幸之丞

BULLET BALLET バレット・バレエの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

十年連れ添った桐子(鈴木京香)が銃で自殺を図る。ショックを受けたパートナーの合田(塚本晋也)は自殺の動機より、なぜか使われた銃に執心する。「は?」と思う方がいるかもしれないが、これはこれでこういう事はわからないでもない。

まずセルフビルドで製作した銃はまともに使えない代物で、目にもの見せようと意気込んだ半グレグループに返り討ちに遭う、そこに含まれる少女・千里(真野きりな)はつい最近電車に飛び込みそうになった際に助けたつもりが腕に噛み傷をつけられた因縁があった。それ以降千里とはお互いに奇妙な縁が生まれる。

今度こそ使われた銃「チーフスペシャル」を苦労の末入手するも、合田は何か強い目的があって入手したかったのではなく、桐子の自死の糸口が掴めるかもという漠然としたものだった。

以降、惹かれた千里を巡って半グレグループの抗争に巻き込まれるようになる。

——この作品では半グレにボコボコにされる中年男性合田もCM会社勤務で、半グレメンバーの大半が学生で就職が間近に迫る現実がある。

合田の職業は彼らにとって羨望な面もある。この作品は本能的に危険に惹かれる若年と十年も同居していたパートナーの女性の心模様もわからない中年男性の世代ギャップが描かれている。

驚いたのは、配役が鈴木京香や井川比佐志といった塚本作品では珍しい本格クラスの俳優陣とカメオ出演で映画監督井筒和幸がヤクザ役、ブランキー・ジェット・シティの中村達也も出演とキャスティングいやに頑張っているところ。千里役の真野きりなも現在では全く活動もなく、そのキャリアでは数少ない映画出演であり、劇中の重要なキーパーソンになっている。

『鉄男』が金属に取り憑かれた物語なら本作品は『銃に取り憑かれた男』の物語で、合理性などまるでなくモノクロで、感性で撮りきっている作品なのがいい。