desperadoi

ブロークバック・マウンテンのdesperadoiのレビュー・感想・評価

4.5
原作既読。イニスとジャックそれぞれの家庭生活のシーンを増やしたことで、彼らの抱える生きづらさの原因が明確になったと思う。家父長制と有害な男らしさの組み合わせは誰も幸せにしない。特にジャックへの想いと保守的な男性性との間で葛藤し、その苛立ちが時に激しい暴力として噴出するイニスの様子には胸を締め付けられる。独立記念日のシーンはこれらが象徴的に描かれた名シーンだろう。打ち上げられた花火があんなに虚しく映るとは。

脚色もさる事ながら、音楽がまた素晴らしい。口数の少ないキャラクター達の心情を代弁するかのような繊細なメロディーは、オープニングの1音目から観客を物語の世界へ引き込んでくれる。アン・リーは文芸作品を得意とするかと思いきや、新しい映像技術を用いたエンタメ大作も撮っていて作家性が掴めないと思っていたが、フィルモグラフィーを追いかけてみる価値が大いにありそう。
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