CHEBUNBUN

アウトローのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

アウトロー(1976年製作の映画)
3.7
【殺意の眼差しと死亡フラグに気付かぬおじさん】
「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載のクリント・イーストウッド映画『アウトロー』。中学、高校時代にスターチャンネルや午後のロードショーでやっていた気がするが、意外と観るタイミングがなくて「死ぬまでに観たい映画1001本」フルマラソン終盤まで残っていました。クリント・イーストウッドといえば、今やカイエ・デュ・シネマやキネマ旬報界隈が賞賛するシネフィル映画監督兼俳優のイメージが強い。彼の早撮りと確かな作劇は私も好きだったりする。そんなクリント・イーストウッド監督5作目『アウトロー』は冒頭から「画に語らせる」演出が炸裂する作品であった。

胸騒ぎがし、駆けつけると家が北軍ゲリラに襲撃されている。業火に燃ゆる家の前で何もすることができず、ノックアウトされたジョージー・ウェールズ(クリント・イーストウッド)。立ち上がった彼は落ちていた銃を拾う。そして、柱に向かって射撃の練習を始める。なかなか柱に当たらない。しかし、狼狽えることなく、ジッと柱を見つめ、冷たく撃ち抜く。着実に敵を追い詰めようとする殺意の眼差しと粘り強さは、本作のテーマを象徴するようなものとなっている。本作は、マカロニ・ウエスタン的な荒れ狂う銃撃戦とアメリカの西部劇特有の溜めの一弾双方のガンアクションが楽しめるハイブリッドな作品となっている。船のロープをスナイパーで断ち切り、敵を錯乱させる場面の面白さ、白兵戦と銃撃のマリアージュなど見所が多い。

そんな中、ギャグパートまである。顕著なのは、ジョージーが女を貪っているおじさんのいるアジトに、ゆらりと現れる場面。酒場のマスターと思しき人は、「ビールを奢るよ」と死亡フラグを察して交渉段階に入っている。そんな状況下で、おじさんたちは女に夢中で背後にいるのに気付かない。ようやく、一人が気づくも、明らかに「この状態で入れる保険ってありますか」状態にもかかわらず、イキりはじめ、そして呆気なく死亡する。この場面には爆笑した。イーストウッドの二重の意味で確かなるショット捌きを目の当たりにした。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUN