シンタロー

私生活のない女のシンタローのレビュー・感想・評価

私生活のない女(1984年製作の映画)
3.7
複雑な家庭に育ち、ヌードモデルをしながら女優を目指すエテル。エキセントリックなオーラを放つ監督ケスリングに見初められたエテルは、ドストエフスキーの「悪霊」を大胆に脚色した新作のヒロイン、リサ役に抜擢される。撮影を通じてケスリングに惹かれていき、関係を持ったエテルだったが、彼と深い仲らしき女の遺体が見つかり、彼に疑念を抱く。エテルは、チェコからの亡命者で、ケスリングに匿われているテロリストのミランと知り合う。彼には忘れられない恋人がいたが、それはあの遺体で女優のエレナだった。ケスリングに才能がないと非難されたエテルは、徐々にミランと接近し始める…。
ポーランドの異端アンジェイ・ズラウスキー作品では初見。この時はハッキリ言って、何だコレでした。この後「狂気の愛」「ポゼッション」の順に鑑賞。いかにも一般ウケしなさそうなショッキングで難解な作品を連発していたので、日本に配給される順序がバラバラだった為です。「ポゼッション」にハマってからは、無修正版の本作を再見。愛と狂気、猥雑と混沌がとにかく力強く、ズラウスキーの祖国への思いが倒錯して、癖になりました。タイトル通り、私生活と「悪霊」の世界が混在していき、どこまでが劇中劇なのか、わけがわからなくなってくるメタ映画となっています。エテルがミランとの狂気じみた関係の中で、忘れられない恋人エレナを演じるようになり、この経験がエテルをケスリングが求めていた大女優へと飛躍させる。まさにズラウスキー版の「スター誕生」ともいえます。ラストも衝撃的です。荒廃した街を闊歩するヒロイン、下半身丸出しのコンテンポラリーダンス、様々な体位で絡み喘ぐラブシーン、妖しげなグリーンの照明等々、煽り気味の撮影は見どころ。珍妙な音楽もおもしろい。
ヒロインのエテルにはヴァレリー・カプリスキー。とにかく脱ぎまくりますが、スタイルはムッチリ寸胴型。ダンスシーンなんか滑稽で仕方ない。お芝居もズラウスキーにされるがままに、アジャーニ風にやってみました、って感じで正直魅力は感じないなぁ。ズラウスキーと付き合い始めた頃のソフィー・マルソーもかなりポッチャリしてたし、おそらくタイプなのでしょう。ケスリング役にはフランシス・ユステール。セルジュ・ゲンズブールの「赤道」が強烈ですが、本作もなかなかのインパクト。アニー・レノックス風の金髪オールバックで決めてます。こちらも下半身丸出しの奮闘ぶり。今やフランスを代表する俳優ランベール・ウィルソンがミラン役。まだ駆け出しの頃ですが、すでに雰囲気あります。ここからしばらくは仏男前俳優といえば、この方とジャン=ユーグ・アングラードでした。
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