Melko

ラスムスくんの幸せをさがしてのMelkoのレビュー・感想・評価

3.9
「なぁ、ラスムス。また来年の春、旅に出ような」

長靴下のピッピ、やかまし村シリーズのリンドグレーン作。原題「さすらいの孤児ラスムス」(Rasmus på luffen)

原題の通り、孤児院を脱走したラスムスは、たまたま出会った風来坊オスカルのお供をしながらさすらう。
思いがけず、見る側の「心の純粋さ」が試される作品だった。
今まで色んな作品で汚い大人を見てきて、しかも風来坊にあまり良いイメージのない私、心根は優しいが、どちらかとゆうと常に利己的な事ばかり考えているオスカルに対し、こいつはそのうちラスムスのことを見捨てるんじゃないか、どこかで突然裏切るんじゃないかと、もう終始ヒヤヒヤで…。
見終わってみて、そんな自分の疑心が恥ずかしくなるぐらいの温かな人と人との信頼と絆に、純粋にジーンとできた。

里親に選定される孤児たち。いつももらわれるのは金髪巻き毛の女の子。ここにいたっていつまで経っても幸せになれない。そうだ自分から親になってくれる人を探しに行こうと、親友グンナルの引き止めるのも聞かずに脱走するラスムス。このラスムス君、無邪気なイタズラ小僧だが、とても賢く頭がキレ、おまけに身軽で足が速い。
パッと見て印象で選定する里親には、この子の良さは分からないのかもしれない。

そんなラスムスを、文句を垂れながらもオヤジのようにケアする風来坊オスカル。汚い身なりにだらしない生活、口を開けば皮肉に、「働きたくない」。事件が起これば真っ先に疑われる。でも、どんな時でもユーモアと歌と自分の信念は忘れない、一本気の通った漢。やってないことは、やってない。言いたいことは警察相手だろうがハッキリ主張する。まさにスウェーデンの寅さん。

幾多の困難やピンチを機転と腕力、脚力でくぐり抜け、親子のような関係になる2人。オスカルを慕うラスムス。
そんなラスムスにやっっと巡ってきた、お金持ちの養子になるチャンス。彼の出した答えは……

親友グンナルのことを、何があっても忘れないラスムスの男気。それは、オスカルに通じるものがあった。

なるほど、ジャケットのシーンは、そこか!

ゆったり展開は北欧映画ならでは。
美しい自然のおかげで、貧しさも見すぼらしさも気にならない。最後のカットでは、ラスムス君にとっての本当の「幸せ」が画面いっぱいに広がり、溢れる多幸感に胸いっぱい。
彼がずっと探し続けた「幸せ」は、お金には変えられないもの。
ぜひ、小さな子どもに見てほしい一作。
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