爆裂BOX

変態村の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

変態村(2004年製作の映画)
3.5
このタイトルから中々見る気がしなかった作品ですが、遂に鑑賞。確かに変態ではありますが、凄い変態って感じでもないし、映画としてはまともに作ってはあるのでちゃんとみれましたが、ただ、「変な映画だな~」とは思いましたね(笑)
各地を巡業中のシンガーマルクは、移動中車が故障して立ち往生し、通りがかった男の案内でペンションに辿り着く。初老のオーナーバルテルはマルクを迎え入れるも、彼の接し方に異様なものを感じたマルクは不安を覚える。やがて狂いだしたバルテルにマルクは監禁され…というストーリーになっています。
「悪魔のいけにえ」等に影響受けた狂人村ホラーではありますが、独特な雰囲気もった作品になっていますね。
コンサートを終えたマルクに村の老婦人たちが迫る冒頭のシーンから何か不穏な空気が漂っていて、マルクが監禁されるのは中盤過ぎくらいなんですが、この不穏で不快感感じる空気感のおかげで何か飽きずに見れましたね。
ペンションのオーナーバルテルも、最初は親切そうな感じ出しながらも車修理すると言ってマルクが散歩に出かけたすきに車内物色して携帯や写真盗んだり、段々マルクへの接し方もおかしくなっていく所は不気味さありましたね。彼が近寄るなと言ってる村の村人達も、納屋に集まって獣姦してたりと異様な連中です。
何故かバルテルの出て行った妻グロリアとマルクを混同したバルテルによってマルクは監禁されますが、最初鈍器で殴り倒されて髪剃られたりはしたけど、グロリアのドレス着せて縛り上げた後はベッドに一緒に寝たりしてそこまで凄惨な暴力を振るったりはしないんですよね。腕に釘打ったりもするけど、釘打つ時のハンマーの叩き方も妙に優しい(笑)
バルテルがビール買いに行って村人に警告もするバーのシーンも、何とも言えない異様な雰囲気漂っています。バルテルが立ち去った後にピアノの音色に合わせて村人たちが踊るダンスも何か異様で妙な不快感があるシーンになっていましたね。
クリスマスディナーのシーンは、大笑いするバルテルとボリス、悲鳴を上げるマルクの顔を高速回転しながら映し、ギョロギョロ動くマルクの目をアップで映す所等露骨な「悪魔のいけにえ」の食卓オマージュシーンでちょっと笑ってしまいました。そこに村人たちが襲撃かけて来て、赤い照明の中で村人にマルクがレイプされ、その横で人が撃たれる様を俯瞰で映すシーンはカオスの極みのような映像になっていましたね。
フィリップ・ナオン演じる村のリーダー格や他の村人もマルクがグロリアに見えるのはどういう訳なんだろ。
バルテルや村人たちがここまで狂った理由が「愛」という所がフランスらしいな、と思いました。一方通行な愛であっても、心から愛した者にある日突然去られ、その悲しみから狂い、外部から新たに来たものにその失った愛する者の面影を見て、もう二度と失わないために縛り付けようとする彼らは狂ってはいるけどある意味最も純粋なのかも。ボリスもいなくなった雌犬ベㇲをずっと探し続けてますし(でも連れて来たのは子牛だったのはどういう事?)沼に沈みながらも「愛してると言ってくれ」と懇願する村人の姿は、愛するという事は底なし沼に沈んでいくようなものだというそのままの意味とも取れるな。
しかし、彼らをここまで狂わせたグロリアとは一体どういう女性なのか。本当に駆け落ちしていなくなったのか?村の出口に磔にされた死体が彼女なのか?そもそも実在するのか?謎過ぎて考察が捗りますね(笑)
マルクが最後に「愛してる」と言ったのは憐れみか情けかそれとも…?
そんな変態度の高い映画ではなかったですが、変な映画であることは確かでしたね。