前髪メガネ

夢売るふたりの前髪メガネのレビュー・感想・評価

夢売るふたり(2012年製作の映画)
4.0
夫婦で営んでいた料理屋が火事になり新しいお店を持つ為に思いついたのは結婚詐欺。正確には恋愛面で苦労している女性に上手く言い寄り結婚をチラつかせてお金を借りる。

松たか子演じる里子のキャラクターが怖くてそれを演じきっているのも兎に角凄い。表情や視線で話を展開していてそれだけでもこの作品は見る価値が有る。
貫也が浮気をして帰ってきた時の風呂場での尋問は特に見応え有りました。どうにかその場を濁そうとする阿部サダヲ演じる貫也と冷静冷酷に熱湯攻めをする里子。そこの辺りではまだ笑えたりできたのですが物語が進むにつれ異常だけど笑えないそんな展開ばかり。

物語は全部を語らず観客に想像や考察させる余白を残していて中々面白い。


ここからは本編に触れつつ考察を垂れ流しましますが、

















まずは
やはりラストシーン。雪降る港でフォークリフトを運転して港で働く里子と刑務所内で調理係を全うする貫也。逃げ切った人と捕まった人と対比の立場ながらも今までと変わらず食に関わる仕事をしてふたりにまだ未来が有るのかと思いましたが、ふたりの表情は真逆。
無表情で働く里子の頭上に飛ぶウミネコ、その鳴き声は遠く離れ壁に囲まれた貫也にも届いて上を向く。その直後の空を自由飛び回る1羽のウミネコ、そしてもう1羽も加わる。そこからの里子のシーンに切り替わり、ウミネコの声に気付いた様な素振りからカメラ目線になり冷たい表情で暫く見つめた後仕事に戻って終わり。
罪を償い刑期を終えたらまた料理人としてやり直す未来を考える貫也と、逃亡生活で転々としていて(渡鳥がそこにかかっていると解釈)未来を見る事をしなくなった里子の対比を表しているのでしょう。そして恐らく、里子はそうやって寄り添う事も嫌になってしまったのではないでしょうか。

冒頭での夫婦像から貫也の浮気をきっかけに色んな女性を騙すにつれふたりの夫婦としての距離感が離れていった様に里子の表情から感じ取れました。
そして恐らくですが里子は子供が欲しかったのかもしれない。ひとみを騙す為に女性系の癌を調べていた様にも見えましたがあれは里子が子供を産めない病気にかかっていたようにもとれます。その腹いせも詐欺に乗せていたとも考えられます。
滝子の元に行ってしまった貫也を追いかけて出会った恵太を初めは払いましたがゆっくりと恵太の手を持ってその手を見つめるのは母になりたかった思いがある様にも見えます。
貫也が子供のいる滝子の元に行ってしまった事が理解できてしまったんじゃないかな。
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