ひげしゃちょー

夢売るふたりのひげしゃちょーのレビュー・感想・評価

夢売るふたり(2012年製作の映画)
4.0
松たか子を改めて見直した。ここまで人間の内面からふつふつと湧き上がる心情を見事に表現できるとは。 『告白』でも怖さを表していたけど今作はそれ以上にすごい。 『告白』は復讐心が浮世離れしていたけど西川監督だけあって人間らしく表現されている。 それにしても鈴木砂羽演じるレイコとの関係をおえてお金を持って帰ったときの里子の嫉妬は恐ろしかった。そしてそれがお金になることを知ってからの里子の心の変わりよう。女は恐ろしい。そして強い。 阿部サダヲもかすむぐらいの演技を見せてくれた。 それほど西川監督の心理描写が巧みなのだろう。 そして非常に細かい演出をする。たとえば、夫が家をあけることが多いから欲求不満になった里子がオナニーをするシーンがあるがFAXの音でふと我にかえり中断するわけだけどきちんとパンツから出し指をティッシュ拭いている。 女性監督だからなのかここまで演出できる監督もそうそういないと思う。 もう一箇所、レイコが酔っ払ってゲロを吐くシーンがあるけど本当にゲロを吐いたような演技だったし、引き際に映ったゲロが妙にリアルだった。 今作ではところどころ映像も目に残る個所がある。軽トラでスカイツリー近くの物件を見に行く途中で街路樹を走り抜けそこからスカイツリーを映してみたりだとか。 ゴンチチ風の音楽もよかった。相当こだわって作ったんだろうなというのが伝わってくる。 ここまで書くとパーフェクトのようだけど騙した人数が多かくストーリー詰め込みすぎたせいか騙された女性達のその後が中途半端にしか描かれていない。それが残念。それでも、ラストはきちんとレイコさんにお金を返し、美しいカモメの鳴き声で終わることで希望を持たせてくれたのでよかった。DVDが発売されたらまた観てみたい。