劇中のほとんどが唱歌に満ちあふれ唱歌ミュージカルのようだった。
音声と映像を巧みに組み合わせた名作。
序盤はふるさと
中盤は荒城の月と浜辺の歌
終盤があおげば尊しと軍歌
そして最終盤がもう一度浜辺の歌
序盤、繰り返される「ふるさと」の旋律に不思議と懐かしさと追憶を覚え、中盤の荒城の月で子どもたちの成長を感じ、終盤のあおげば尊しで別れに涙する。
最後に浜辺の歌で二十四の瞳たちを思い出し再び涙した。
1954年だからこそ撮れた映画なんだろう。今作れば文化や人柄。牛車や肥溜め、田園風景などその全てが作りものになってしまう。
日本に実際あった風景にも関わらず、その全てが遠い絵本の世界のようだった。
無邪気で楽しそうに歌う子どもたち。義理に厚い島の人。先生のために遠い道をかけていく子どもたち。
楽しげな毎日が繰り返されるたびにその後の避けられない時代の運命を思い、沈痛な気持ちになる。中盤の将来の希望について書くシーンがことさらに残酷だ。
終盤少し足早に過ぎていった感があったが、全て浜辺の歌にもっていかれた。
「あした浜辺をさまよえば 昔のことぞ
しのばるる 風の音よ 雲のさまよ
寄する波も 貝の色も」
とはいえ、戦争という悲劇は良くも悪くもこうした文化を生む背景になってきた側面もあり、複雑だ。