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ムアラフ 改心のditaのレビュー・感想・評価

ムアラフ 改心(2007年製作の映画)
4.0
@シネマート心斎橋 ~ヤスミン・アフマド特集~   

宗教を描きながら宗教観を超えてくるってこの人どうなってるの…と思いつつ、直前に観た『ムクシン』の余韻が消えないまま、ここにもあそこにもヤスミンがおる…と、うるうるしながら観た。くるりの♪言葉はさんかく こころは四角 はこの映画が元なのではないかとも思ったりした(たぶん違うんやろうけど)。

会えない人を思い続けることも、会いたくない人のことを考え続けることも辛い。何かを信じたいけど裏切られるのが怖い。祈りを捧げたところで報われないなら意味などない。そんな否定形の思いを抱えながらわたしは生きている。この映画の中にも否定形はたくさんある。でも、それ以上の肯定が溢れていた。嫌いな人を守り抜こうとすること、わからないことを知ろうとすること、届かない人に語り続けること、信仰とは異なる神を理解しようとすること、決してそれぞれの神への祈りを否定することなく、神への祈りと人への思いを含んだものが「優しさ」なんだと思った。

「不在の存在」というものは人を苦しめるものだと思っていた。実際にわたしもずっと苦しんでいる。でも、この映画の「不在の存在」はとても優しかった。孤独を抱えて生きてきたわたしの周りにも、姿の見えない誰かが存在しているのかもしれないと信じてみたくなった。

神に祈りを、人に赦しを、映画に愛を、愛する人には口づけを。口づけしたくなる人になれるように、会いたいと思ってもらえるようになるには、あなたじゃなくてわたしが変わらなきゃいけない。優しくなろう。あなたのまあるい涙をそっと拭いてあげられるような人になろう。
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