うにたべたい

小説吉田学校のうにたべたいのレビュー・感想・評価

小説吉田学校(1983年製作の映画)
4.1
戦後間もない1946年より5回にわたり内閣総理大臣の任についた吉田茂を中心に描いた映画。
タイトルに"小説"とついているのは、タイトルを原作小説から取ったためで、原作は吉田茂以降の内閣の動乱についても書かれています。
"吉田学校"は第一次吉田内閣発足時に吉田茂が地歩を築くのため、吉田と同じ官僚を中心に集めた議員グループのことで、後の首相となる佐藤栄作や池田勇人、田中角栄などが生徒でした。
本作では、吉田内閣に発足から退任までが描かれていて、その在任期間中の政治ドラマが繰り広げられます。

吉田茂が内閣総理大臣に就任したときは、日本はGHQの占領下にありました。
その頃、ソビエトとの冷戦を予期していたアメリカは、日本に改憲と再軍備を要求する圧力を行っていたのですが、吉田茂は徹底した非武装を主張します。
結果、後の自衛隊の前身となる警察予備隊が組織されるも、安全保障条約の締結を行い日本の独立政権に導くドラマが描かれます。
安全保障条約は、後に冷戦が進んだ時に撤回を求めたデモのターゲットだった条約というイメージでしたが、本作ではその締結の立役者・吉田茂の苦労と、その条約が日本独立ためどれだけ重要であったかが述べられれていて、非常に勉強になりました。

ただ、講和条約の締結をピークに、以降は対抗勢力の鳩山一郎の総裁復帰の動きを感じると、裏で選挙運動を行い準備の整った後、抜き打ち解散をしてまんまと再選するなど、政権に居座り続ける行動をします。
側近には退陣を勧められるのですが、質問者への暴言による懲罰動議、内閣不信任案が可決され、それでも根回しして再選されるなど、政治の権力闘争に話が移っていきます。
退陣を決めた時の潔さは良く、一本の映画としてとてもおもしろい作品でした。

在任期間中の政治家たちも登場し、戦後日本の政治がよく分かります。
1983年上映の結構古い映画ですが、吉田茂の逸話がなぞられていて、最後まで飽きることなく楽しんで見れました。
戦後日本の政治の動きに詳しくなれる、非常に興味深い一作でした。