大好きな監督や作家ほど代表作を観るのを後回しにしてしまう、それを体験するのに適したタイミングが有るのだと下手に勘繰ってしまって。
『浮き雲』を体験するタイミングが今日だった。シネヌーヴォのカウリスマキ特集でなんとフィルム上映。こんなに嬉しいことはない。
公開当時に「同監督初のハッピーエンド」
との触れ込みがあったそうだが本当にその通り、カウリスマキ感が薄いと言っても差し支えのない程に。(実際はそんなこと全くないのだけれど)
ギャンブルで擦った時のライティングでの感情の描き方や、カティ・オウティネンの真っ赤なコートに自宅の色遣いは他作に増して鬼気迫るものを感じた。
ここまでべた褒めだが、カウリスマキの作品で最優秀には感じていない。
ただあのラストカットは他のあらゆる映画を以てしても勝るものはないと感じる。
存在を認められた瞬間の喜びはやはり何にも変え難いものがある。