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浮き雲のよく観るのネタバレレビュー・内容・結末

浮き雲(1996年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

耐えて、耐えて、耐えた先の絶望に視界が霞んでもう立ち直れなくなるとき、搾り出した言葉と長年の交友関係に救われることがあるよね、という訓戒を忍ばせた希望の物語。

カウリスマキ監督の敗者三部作の第一作。希望を味わえば絶望に転じ、状況が良くなると思ったらまた元の生活に戻らされる現実的な劇。傷心を癒す間を与えてくれない。最後の場面は、本当にこれ以上のものを用意できない限界まで状況を変えさせ、客が来ないもどかしさに鑑賞者のぼくらも気持ちが惹きつけられ当惑した。しかし映画の最後に用意されていた人生の「浮き雲」という希望にぼくたちも救われる。掴めないような実態のない絵空事に時間を浪する暇なんてないはずなのに、演者の言葉に励まされ、先に進もうとする活力を授かる顛末を堪能できて、満足。