TAK44マグナム

アパッチのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

アパッチ(1990年製作の映画)
3.5
空飛ぶ最強の矛、それは戦闘ヘリコプター!


ニコラス・ケイジ版「トップガン」であり、戦闘ヘリコプター版「トップガン」である本作。
「トップガン」は説明不要のトム・クルーズの出世作にしてMTV映画の金字塔であり、続編が今年公開になる大ヒット映画でありますが、その二番煎じを狙った感は否めません。
米軍が誇る戦闘用ヘリコプターのアパッチを主役に据えて、そのトップパイロットの座を競う特別部隊選抜訓練で揉まれる若きパイロット達を描く・・・まさしく「トップガン」を下敷きにしていますね。

しかし、ドラマとしては決して濃くはなかった「トップガン」よりも更に薄まった内容で、ドラマパートには特筆すべき点を見つけることが出来ませんでした。
一応、生意気だが腕は超一流のニコラス・ケイジが眼に難点を抱えていたり、偵察ヘリのパイロット候補生であるヒロイン(演じるのは「ブレードランナー」で鮮烈な印象をのこしたショーン・ヤング)とのロマンスがあったり、鬼教官(というほどでもないトミー・リー・ジョーンズ)との確執や教官自身の任務に対する焦燥などのドラマが用意されていますが、どれも中途半端で盛り上がらず。
眼の問題は割と簡単に解決しますし、一度は別れたヒロインとの恋も何だか分からないうちに再燃します。
また、薄口になった理由のひとつは、主人公と教官のどちらにも欲張ってスポットをあてた事にもあるのではないかと。
前線に復帰したいという教官のドラマも同時に描いていて、どちらかというとそちらの比重の方が重たく感じられもするんですよね。
そうすると必然的に主人公であるはずのニコラス・ケイジの影が薄くなってしまいます。
なにせ同僚を敵パイロットに撃墜されていることと、ヒロインと過去に付き合っていたらしい事ぐらいしか背景が語られないキャラクターなので肉付けが満足ではなく、加えて性格も優しいのかそうでないのか分かりにくい。
後半になるとだいぶ殊勝になりますけれど(苦笑)。
あと、決定的なのが「トップガン」でいうところのアイスマンの様なライバルキャラクターが不在なことがあげられます。
これは痛い。まったく競争を感じられないし、最初から最後まで主人公がエースには違いないので緊張感が無いのが玉に瑕。
眼の問題よりもライバルが欲しかったです。
まぁ、そうすると完全に「トップガン」のパクリになってしまうので、少しは独自性を出そうとした結果なのかもしれませんが・・・

しかしながら本作にとって、そういった事はさして問題ではないのでしょう。
兎にも角にも、無骨で格好いい戦闘ヘリコプターが活躍すれば、それでOKなのであり、それが正解だと思います。
アパッチやコブラ、ハウンドなどの戦闘ヘリコプターが活躍する作品は戦争アクションをはじめとして数多くあれど、その実、戦闘ヘリコプターをメインに据えた作品はあまり製作されていないのではないでしょうか?
架空のハイテク戦闘ヘリがロサンゼルス の街を飛ぶスリラー映画「ブルーサンダー」や、テレビドラマですがやはり架空の戦闘ヘリの活躍を描いた「超音速攻撃ヘリ・エアウルフ」がパッと思い浮かぶぐらいです。
そんな状況下、米軍万歳ではありますが戦闘ヘリの実機を飛ばした迫力の映像が満載の本作は貴重といえるでしょう。
当たり前ですがCGには出せない、本物の魅力に溢れています。

敵となるのは南米の麻薬組織ですけれど、これがまたジェット戦闘機まで配備された軍隊顔負けの組織でして、世界有数のヘリパイロットが雇われているんですね。
そのパイロット以外は誰が属しているのか全然分からない組織が相手なので深い作戦も何もなく、クライマックスは「ファイヤーバード作戦」と称してアパッチで空中戦力を相手にしている間に地上部隊が悪党どもを一網打尽にしようという単純明快な流れになります。
ここでの度肝抜く空戦が本作最大のウリであり、全火力を一斉発射して敵を叩くアパッチの勇姿が強烈に格好良い!
また、迫りくる戦闘機に対して対空携帯
火器であるスティンガーをショーン・ヤングが撃つ場面も最高にアゲアゲで、その発射シークエンスは場の緊迫感も手伝って、男の子的には堪らんです。
やはり、華奢な女子が頑張ってロケットランチャーを撃つ場面は、「コマンドー」の「間違って逆方向に撃っちゃった、テヘ⭐︎」の場面然り、とても良いものですな〜。


そんなわけで、内容的には浅い作品ではありますが、アパッチの宣伝としては完璧ですし、メカフェチやミリタリーオタクな方にはオススメできます。
VRシミュレーターでの訓練シーンはかなりCG関係が前時代的ではありますが、これは製作年度からすると致し方ないところ。
重箱の隅をつっつくより、鋼鉄のマシーンによる重厚な響きをハートにビンビン感じるのが吉な映画ですね。
DVD化が待たれる一作。


某動画サイトにて