こぅ

湖のほとりでのこぅのレビュー・感想・評価

湖のほとりで(2007年製作の映画)
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「犯人: 今しがた自供はした アンナを殺した
今はそれで

警部: 分かった」

'23〜'24冬のホラー/ミステリー祭④

ミステリーの女王、カリン・フォッスムの原作[見知らぬ男の視線]の映画化で、
アンドレア・モライヨーリ監督デヴューによる、【ヒューマン・ミステリー】の秀作。

【イタリア・アカデミー賞 史上最多主要10部門受賞】作品。


ある日、湖のほとりでこの村の美女、アンナ・ナダル(アレッシア・ピオヴァン)の他殺体が発見される。
遺体の状況から親しい顔見知りの犯行と推測され、村に越してきたばかりの刑部サンツィオ(トニ・セルヴィッロ)は、早速事情聴取を開始する。
やがて、誰もが愛する家族にさえ打ち明けられない痛みに苦しんでいる現実が暴かれていく。
そしてサンツィオ刑部もまた、愛する家族との間に大きな苦悩と葛藤を抱えていた…。


ファーストショット、
田舎っぺには親近感ある、都会では見れない山並。
本作の舞台が静かな田舎であると一発で分かる。
続いて、
登校する小学生、マルタを玄関で送り出す叔母。
途中、禿げたキモデブ独身中年、マリオ(フランコ・ラベラ)が車に乗せる、、
後にマルタが帰らないと、ひと騒動起こるが、、

その後、湖畔でアンナの全裸死体が発見される。
第一発見者は、アンナを密かに好きだったマリオで、青いコートをかけてやっていた。
事情聴取に向かったのは、サンツィオ警部。
警部は娘、フランチェスカ(ジュリア・ミケリーニ)とギクシャクし、妻は、施設に入院していた。

被害者、アンナはホッケーの選手で、コンラッド・カナーリ(ファブツィオ・ジフーニ)の3歳息子、アンジェロのベビーシッターをしていたのだが、亡くなっていた(夫婦はこれを機に離婚)。
アンジェロの死にアンナはとてもショックを受けていた。
アンナの父、ダヴィデは娘を溺愛していた。
姉、シルヴィア(ハイジ・カルダート)は学生で、妹とは正反対だと語る。

犯人は、
優しい殺され方からアンナを愛していた人物と推測され、恋人のロベルト(デニス・ファソロ)が一番の容疑者で、真っ先に警部が尋問するも、容疑を否認。
動機は無いと主張するも、庭から消えたアンナのデイバッグが発見され、有力な容疑者として勾留される。

自分の抱えた家族の問題と向き合いながら仕事/捜査で関わった人々の闇/苦悩が浮き彫りになる。
家族仲/夫婦仲で、苦悩しているのは決して自分だけじゃないんだ、と気づかされる。

終盤に
アンナのPCの中のCDのパスワードが解かれた、、
ストレートに犯人に繋がるのだろうか⁈


⚠️構成/構造に関するネタバレ注意報発令⚠️
↓ ↓


































クライマックスは、
犯人宅での会話/自供。
自供後、警部は納得せず、会話はまだ続く、
カメラはゆっくりスクロールし、
窓から外に見える生前の被害者/アンナの姿、回想シークエンスのスムーズな演出〜殺害動機に真相も付いてくるのは上手いし、その直後のセリフでカットするタイミングも完璧だ!!


事件解決後のラスト、
警部親子が訪ねた施設、哀しいんだけど、微笑ましいひと筋の光/希望の余韻。
〜広場の俯瞰ショットとEDクレジットのデザインがオシャレだ。


総評:
地味で静かは認めるが、
本作は、ヒューマン・ミステリー と括るに相応しい。
ヒューマンをミステリーにしっかり絡めた秀逸で稀有な脚本。
前半の有力なミスディレクションは、サスペンスの法則的としても、まさか終盤のクライマックス前までにもぶち込んでくる(ツイスト)とは大胆だ!
犯人への 伏線 はあったか⁈一見皆無で、あるとするならば、観た者が想像/補完するという高度な形でだろう(流石に真相まで当てるのは不可能)。
逆に本作は、眉間にシワ寄せる 犯人当てを目指さず ヒューマンドラマとして 観たままで 良いのかも知れないし、その観方で充分満足出来る筈。
のほほんと眺めちゃいけないのは 素晴らしい撮影 で、落ち着いていて、ライティングも絶妙、長回し&ロングショットやスクロール、ジャンプカット、警部の街路を歩くショットなど、、特筆は、外から内から 窓 が象徴的に撮られ、効果的だ。
後味悪く締めずもまた良き。
が、自分含めて絶賛評価する者は一部だ。

キャストについて
警部役、トニ・セルヴィッロは晩年のベベル似⁈で渋く、
女優陣は魅力的で、アンナ役のアレッシア・ピオヴァンは美人でグラマー。アンジェロの母、キアラ役、【レインマン】のヴァレリア・ゴリノ(41)を久々見たが、この頃まだまだ綺麗&演技力を再認識。
こぅ

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