このレビューはネタバレを含みます
ひとけのない広島とヌヴェールの風景が美しい。
一度も家族のいるパリの風景は出てこない。
忘れるはずがないほどの恋の記憶と、
戦争の記憶を重ねて、
風景美ともに語られていく。
資料館でみた原爆の被害を観察したら理解できるという女に、君は広島を何も知らないといわれる。
かつてのヌヴェール恋のように
ヒロシマという名前になった男との語りのなかで女は自分を知っていくことになる。
男の口から妻以外の話は語られない。
夜明けが遠い、眠らない広島もまた、
夜明けをむかえた。
過去の恋を忘れたことを決めた女は、
広島の恋をどう舵取りしていくのだろうか。
ヒロシマとヌヴェールと呼び合う二人の姿で映画は終わる。
90分ながら、主人公たちのように、
夜明けまでが長く感じてしまう。
なかなか濃い映画だ。