【人の記憶と都市の記憶】
遠い昔にどこかの名画座で見て、最近BS録画にて久しぶりに再鑑賞しました。
内容はほとんど忘れていましたが、いかにものフランス映画だなと思いました。
広島の原爆惨禍を語るフランス人女性に、君は広島を知らないと答える日本人男性。
この辺はどこか『去年マリエンバートで』に通じる味がありますが、その辺がこの時期のフランス映画特有の感触なのでしょう。
映画はそのあと、広島の街の様子を映し出していく。
広島というとすぐ原爆と短絡するけれど、この時代の広島にはすでに普通の人々の暮らしがあるし、この時代の規模の大きな地方都市ならではの繁華街や種々の店舗が連なっているわけです。カメラはそれを次々と追っていく。
ヒロインはフランスの、ほとんど無名の町ヌヴェールに生まれ育った。ヌヴェールという発音が、どこかヌーヴェル・ヴァーグに似ているのは偶然でしょうか。
人と人との偶然の出会いは、言うならばつながりのない東の都市と西の町の出会いでもあった。この映画を見ているとそんなことを思わせられます。
ヒロインを演じるエマニュエル・リヴァがチャーミング。私もこんなフランス女性と、24時間でなく2時間でもいいからお付き合いしたい(笑)。