BOB

オープニング・ナイトのBOBのレビュー・感想・評価

オープニング・ナイト(1978年製作の映画)
4.0
ジーナ・ローランズ主演、ジョン・カサヴェテスが監督、脚本、役者を務めた人間ドラマ。

舞台女優マートルが、自身の熱狂的な若いファンが事故死するのを目撃。それ以降、彼女のことが頭から離れなくなっていく。

「第2の女」

カサヴェテス監督作品7作目にして、やっと心から素晴らしいと思える作品に出会えた。自分には合わないと見切りをつけず、根気強く観てきた甲斐があった。とても嬉しい。

舞台女優が老いへの恐怖に必死に抗うドラマは興味深かったし、現実と妄想と演劇の境目が曖昧になっていくニューロティックスリラーとしての面白みや、演劇の内幕ものとしての面白み、映画内映画のような面白みまであった。

中年の舞台女優が、老いへの恐怖、加齢と共に女性としての魅力を失っていくのではないかという恐怖に襲われる。若くはないが老いてもいないと認識している自分の実年齢と、舞台関係者や観客たちから求められる役年齢とのギャップに思い悩む。

"40過ぎたら女優は終わり"みたいなハリウッドに蔓延する女優へのエイジズムに対して、一石投じている作品でもあると思う。1978年にこのテーマを真正面から扱えたのは、アンチハリウッド的な立場をとるカサヴェテス監督ならではなのでは?

ラストシークエンスがとても面白い。ジョン・カサヴェテス&ジーナ・ローランズ夫婦が劇中劇で夫婦役を演じる。マートルは即興演技によって、現実味が感じられなかった元の脚本を、自分の物語として完成させた。不足していると感じていた希望を加え、悲劇を喜劇に変えてみせた。その結果、老いへの恐怖からも解放された。物凄いカタルシスを得られた。

冒頭の自動車事故シーンがショッキング。本当に轢かれているようにしか見えない見事なショットだった。

少女の亡霊に初めて会う直前のピンぼけショット。舞台裏の撮り方。

488
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