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出撃のNMのレビュー・感想・評価

出撃(1964年製作の映画)
3.0
特攻隊として出発した仲間のうち、機体の故障により川道と桐原が帰ってきた。

死んだら靖国で会おうと約束したのに。妹は血書で手紙を送ってくれたのに。恋人は覚悟の上で結婚し、見送ってくれたのに。
自分一人だけが帰ってきてしまった。
故障なんだから当然だ、次こそ死ねば良いと言うが、二人はそれぞれ忸怩たる思いを抱える。

再び出発するが、川道はまたしても同じ故障で帰ってきた。
新妻と再会できたのは嬉しいが、その機体を整備したのは妻であったので、わざと不備を残したと疑われかねない。喜ぶことを耐え、またしても妻を東京に帰す。妻として夫の最期を見送ることさえゆるされない。

川道は三度目の出撃に発つが、またも同じ故障で帰ってきた。川道はますます信念を強くするが、ついに上官たちから疑いをもたれるようになり……。

何度も死ぬ覚悟をし、何度も大事な人が死ぬ覚悟をし、再び喜び、しかしそれを隠し、ということが繰り返され、みな精神が疲弊、川道は追い詰められていく。

妻は夫が立派に死ぬことを願い、夫は新妻を遠くへやる。
愛情で結ばれた二人が、それとは逆のことを願わねばならない。
故郷の両親、兄弟らの思いも複雑。

特攻隊員が度々歌う軍歌が印象的。勇ましい歌が酒盛りで歌われるが、今聞くとそれは悲しさしか感じない。

ストーリーは分かりやすくシンプル。愛する人の死を願う状況なんておかしい、というただ一つのテーマに絞られている。
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