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白蛇伝のSIのレビュー・感想・評価

白蛇伝(1958年製作の映画)
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2021.11.18
れんが屋にて鑑賞

二匹の動物と暮らす心豊かな主人公は、小さい頃に大人に泣く泣く捨てさせられた白蛇の妖精と恋に落ちる。僧侶により地方に流刑されても主人公は戻ってくるが、僧侶によって白蛇は天界に飛ばされ主人公は後を追って転落死、白蛇は人間になることで命の花を得て、動物たちの頑張りもあり主人公は生き返り、二人は結ばれる。

日本アニメの伝説的作品。今作の予告編で当時の東映社長・大川博は「東洋のディズニーになる」と触れ込み、それを観て宮崎さんは東映アニメーションの門戸を叩いた。実際に東洋のディズニーにジブリがなったのだから、大川さんは間違っていなかったという訳。痺れる。

脚本は生死を行き来するラブストーリー。妖怪と人間の身分の違いがカセとなっている古典。言葉を話せる動物たちの奮闘がサイドで走っており、ディズニーらしいミュージカルやストレッチの効いた格闘シーンなどが余興として楽しい。
オープニングシークエンスで、中国の切り絵紙芝居様に、ほぼ絵が動かず過去を描いていくのが良い。切り替わり絵が動きだした時の気持ち良さ。
大塚康夫さん守康二さんなど、大変だっただろう。

随所に宮崎さんへの影響がみられ、そこが一番の見どころか。
龍は千と千尋。宝物庫に落ちていくときの動きは、完全に千尋でパクっている。
小さいときに大事にしていた蛇が恋人として現れるのも、千尋的コロガリ。
悪い人間ではないが主人公たちを引き裂く、早口の僧侶。これは、もののけ姫にいたジゴ坊。
ちっこいパンダが動物愚連隊をノす。こちらはディズニーだが、カンフー・パンダは、ここからきているのだろうか。
カタキに向けて海の中を大量の魚が進み、それを少女が率いている、というのは、どうみてもポニョ。画の質感、角がなく、まるまるっとさせよう、というのがポニョのグランドコンセプトだが、それもここからきているな。気付いてしまった。

共感性よりアニメの特徴を取った結果、古代中華が舞台になったのだろう。
蛇がどうのより、パンダとレッサーパンダ?が喋っている方が気になる。
ロマンスの導入も早すぎて、二人が恋に落ちているのが腑に落ちないまま進む。ホン上のアラはあるが、ここまでヌルヌル動くとは。
とはいいつつ、背景や表情など、例えば1984年「ナウシカ」と比べると、たった26年で、宮崎駿という人間は飛躍的にアニメーションを進歩させたのだなと気付かされる。
クリエイティブなんて、エピゴーネンに過ぎない、という宮崎さんの言葉が、今ならはっきりと腑に落ちる。
実際、アウトプットはインプットしてきたものの組み合わせにしか過ぎない。インプットにどう心を動かされ、どう昇華させるかに、才能が出る。

おもしろいですね。。。
今後も折に触れて何度か観る機会がありそうです。
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