阿房門王仁太郎

白蛇伝の阿房門王仁太郎のレビュー・感想・評価

白蛇伝(1958年製作の映画)
4.0
 日本最初のフルカラーの長編アニメーションという事で本当にアニメーションで出来る事やりたい事が沢山あったのだろうと思った。だから映画としては多少メリハリが弱く物語性が弱い嫌いがあるとは思った(これは後年の『太陽の王子 ホルスの大冒険』などの物語の構成と比べると顕著で、まだ出来上がった頃の文法での試行錯誤の感がある)。これを今観て、一切の譲歩や忌憚無く面白いアニメと思うのは少し難しいのではないか。
 然しこのアニメーションとしての粋を凝らした雑多な表現やアクション自体は観ていて面白くあるし、その百花繚乱の乱れ具合がややもするとヒロインと主人公以外を全てモブ的に見做してしまう、逆に主人公がモブになってしまう前景と背景の峻別と言う洗練を無化する効果も図らずもある気がする。意図せざるセカイ系批判的な?、兎も角主人公にならないけどそれより出しゃばりはする「余計な人間」がいるから森繁久彌の「これは不思議な物語です。然し、優しい物語でもあります」が空虚な自慰にならずに実感出来るのだろう。
阿房門王仁太郎

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