くまちゃん

追悼のメロディのくまちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

追悼のメロディ(1976年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

ジャン・ポール・ベルモンド主演のサスペンス。

労働者階級出身のルクレールは電車からクルネイに降り立つ。
7年もの間、刑に服していたらしい。罪状は殺人。逮捕時、野次馬により散々詰られた。罵倒され、批判され、非難され街の人々はルクレールを忘れない。
選挙前日に大本命コジャックを殺害したのだから。
しかし、ルクレールはやっていない。
冤罪であり、陰謀である。ルクレールの静かな復讐が今、始まる。

現代と過去を交差するように構成されたプロットは緻密で精巧で綺麗にまとまっているが、脳内でパズルのように時系列を組み立てる必要があるため、所見で全体像をつかむのが難しい。

7年も経てば全てが変わる。街も人も。
繊維産業で隆盛を極める地方都市なら尚の事。浦島太郎状態にあるルクレールの哀切がひしひしと伝わってくる。

政治、冤罪、麻薬、陰謀、復讐、様々な要素が複雑に絡み合いスリリングであるとともに叙情的であり、詩的な雰囲気も纏う上品なフレンチノワール。

朝、木の下に横たわる敵を見てほくそ笑む。byウィリアム・ブレイク

難解な表現をすることでシンプルな表現を隠すという特有の表現技法を確立したブレイク。
難解なプロットによってシンプルなストーリーに見応えを付加させた今作そのものがウィリアム・ブレイク的とも言えるのではないだろうか。

ラスト、駅にて。シャルロットを見るルクレールとスコープを覗く殺し屋。2つの視線がカットバックする演出は、堕ちたルクレールと街の実力者リエガーを対比し、逆転し、復讐の完遂をスタイリッシュに描き出す。
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