オーウェン

追悼のメロディのオーウェンのレビュー・感想・評価

追悼のメロディ(1976年製作の映画)
3.0
さすがはフィルムノワールの大ベテランと言うべきか、アンリ・ヴェルヌイユ監督の語り口は、極めて常套的な一匹狼の復讐譚を、凝りに凝った時制の管理によって、誠に切れ味良く見せていく一転において、実に見事だと思う。

映画の冒頭でまず、7年の刑務所暮らしの後に、北フランスの生まれ故郷に、主人公が帰って来る現在を起点に、少年時代の大過去へ、甘やかな愛を育む中過去へ、そして廃墟の工事現場から、かつて失意のうちに支配人を務めた、ナイトクラブの小過去へと変奏されていく一方、主人公を殺人罪にデッチ上げた影の黒幕は誰かという、真相追及の過程が、現在進行形で時にスリリングに、時にセンチメンタルに描かれていくのだ。

「赤と黒」風な物語のヴァリエーションにベルモンド流の活劇感覚で味付けし、マリー=フランシス・ピジェの情感で仕上げた作品だと思う。
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