Bobsan

赤い影のBobsanのレビュー・感想・評価

赤い影(1973年製作の映画)
5.0
何度観ても正確には理解できない作品ですね。赤と水が象徴的に使われ、この小難しい物語を導いていきますが、最後まで何が語られているのか掴みどころがありません。
ダフネ・デュ・モーリアの原作がどうなっているのかわかりませんが、この作品を(飽く迄も)自分なりに解釈すると、自分の慢心から水の事故で娘を失った男が、心の傷が癒えぬまま水の都ベニスを訪れ、そこで水の中に見える娘の(最後に着ていた赤いレインコートの)影に翻弄され、徐々に精神の均衡が崩れた挙げ句、遂に耐えきれなくなって自死する話なのではないかと(今のところは)思います。
この作品を観ていていつも感じるのは、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「ベニスに死す」との相似です。舞台がベニスなので風景は勿論ですが、そこの人間達のなんとも異質で相容れない感じや足元が覚束ないような居心地の悪さなど、主人公を苛む不安が観ているこちらに伝わって来ます。ニコラス・ローグ監督はその辺りも参考にしたのではないでしょうか。
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