ひでやん

ブルジョワジーの秘かな愉しみのひでやんのレビュー・感想・評価

4.3
ユーモアを交えつつ、ブルジョワ階級の特異な生態をシニカルに描いた作品。

軍人が生い立ちを語り出す場面が唐突で、ぶつ切りでつかみ所のない場面の連続に首を傾げたが、じわじわと滑稽味が増していった。

食事の度に邪魔が入り、食事にありつけないというエピソードの反復が面白い。遺体や性欲、夢などによって悉く食事が中断され、カフェでは品切ればかりで飲み物すら飲めないのはコントのようだ。

情事の際にも邪魔が入り、眠りは悪夢でうなされる。やれワインの好みだとかマティーニの作り方だとかを自慢気に語っても、ブルジョワ階級に属する面々の「愉しみ」は結局、庶民となんら変わらない。

人間の三大欲求である食欲、性欲、睡眠欲に対して、食えない、やれない、眠れないという皮肉たっぷりのブルジョワいじめである。欲望は無限大で決して満たされない。そんな未完の晩餐に何の脈絡もなく挿入される一本道。

目と鼻の先の距離でも車に乗る金持ちを歩かせる事が可笑しかったが、2度目の挿入で、この場面だけが現実かもと思った。6人で歩きながら順番に見た夢を語る事が「秘かな愉しみ」なのかと。

そしてラストの一本道にはなんとも言えない虚無感があった。山も谷も分岐もない無味乾燥とした一本道は、虚飾に包まれた彼らの人生を表しているようだった。
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