針

ブルジョワジーの秘かな愉しみの針のレビュー・感想・評価

3.5
ずっと買うか迷ってた四方田犬彦の『ルイス・ブニュエル』を買ってしまったのでこの人の映画は観られるだけ観ることに決まりました。

こちらは晩年の一作。感触はわりと好きだけど意味はぜんぜん分からない映画でした。いわゆるブルジョワジー(中産階級)に属する男女6人組がいろんなところで食事を楽しもうとするけど、そのたんびによく分からない不条理な事態に見舞われたり、はたまた自分たちでそうした事態を呼び込んだりするというエピソードの羅列によって成り立っています。

最初は「脂肪の塊」みたいにブルジョワジーという人々のくだらなさや滑稽さを風刺し笑いのめすような映画かと思ったんだけど、どうもそこまで単純な作品でもなさそう。よく知らない脇役の見た夢のエピソードが突然始まったり、夢オチがどこまでも入れ子状に続いたりして、何が現実の出来事なのかどんどん分からなくなってくる。エピソード同士の脈絡もあんまない感じで、自分はうまく全体像をつかむことができなかったです、というかそれが狙いかも。結局メシはひとりで食べるのがうまいってこと? あとキリスト教へのおちょくりももちろんあります。

今まで観たなかでは『アンダルシアの犬』に一番感触の近い映画でした。悪ふざけまとめみたいな。ときおり主人公の男女6人が畑の中の道をえんえん歩いていくシーンが挟まれるんだけど、この人たちがどう見ても自分の足でてくてく歩くような人たちじゃないのでそこがなんか可笑しかった。どこまで行ってもうまく食事にありつけないという不条理さの象徴的な表現なのかな。
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