Mikiyoshi1986

ブルジョワジーの秘かな愉しみのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

4.7
ブルジョワたちの醜悪や滑稽さをユーモラスに描いたブニュエルの傑作シュールレアリズム。
といってもブルジョワに対する手厳しい批判などでは毛頭なく、軽快に笑い飛ばし、とことん弄り倒す手法が大変痛快です。

そもそもブニュエルって上流階級に突出してアンチテーゼ論を繰り広げているわけでは決してなく(ビリディアナとかが良い例)、
あくまで"ブルジョワジー"という分かりやすく聴衆から割と賛同を得やすいツールを通し、
「どんなに身分や肩書きを取り繕ったって所詮人間って皆こんなもんだよね」というスタンスで人間理解に勤しんでいる印象を抱きます。

夢と現実が交錯する中、度重なる幽霊の登場など絶えず「死」の匂いを漂わせ、人間の負の部分を抉る脚本は天才的。

食事をしようと思えば必ず邪魔が入り、セックスしようと思えばまた邪魔が入り、おまけに睡眠は悪夢によって妨害されちゃうブルジョワたち。
食欲・性欲・睡眠欲、この人間の三大欲求を妨害されるフラストレーションにより、我々はある種の嘲笑を以て本作を楽しむことになります。
それでも飽くなき欲求を満たすためにさ迷う6人組。
これこそブニュエルが訴える人間の醜悪を、我々にも無意識に芽生えさせちゃうというトリック作品。
ブニュエルは本当に天才。
Mikiyoshi1986

Mikiyoshi1986