エディ

ブルジョワジーの秘かな愉しみのエディのレビュー・感想・評価

4.2
サルバドールダリとも親交があった監督ルイスブニュエルによるシュールレアリズム映画の代表的名作。溶けた時計を描いたダリやマグリッドなどシュールレアリズムの画家が映画を作ったら恐らくこういう映画になるのだと思う。
走ろうと思っても全然走れない、死んだはずの人間が生きている人間と一緒に話している、時間軸がめちゃくちゃ・・・誰しもこんな夢を見た事があるだろうが、この映画はまさにこんなシーンの連続だ。
主人公は、架空の国ミランダ共和国のパリ大使と、彼の取り巻きであるブルジョワ気取りのセレブたち。彼らは大使館でコカインを吸い、妻を連れて連日のようにパーティーを繰り広げている。こんな彼らの日常をショートショートのような形式で軽くコミカルに描くのだが、時間軸がめちゃくちゃで、夢と現実シーンが曖昧で、似たようなシーンが繰り返され、論理的に破綻するシーンが多発、更には死者と生きている人間が曖昧といった感じなので、まるで夢の中で延々と繰り広げられる饗宴のようだ。
毎度毎度パーティーをしているのに、食事にありつこうとすると邪魔が入っていつも食べられずに、田園の中を無言で歩く結果になる。レストランに入ったら、オーナーの葬儀が行われていたり、パーティーの主催者が突如セックスを始めたり、パリで有名な司教が庭師で働いたり、パーティー参加者に縁起の良い夢を見たといって伍長が聞かせたストーリーはひたすら演技が悪い・・・といったナンセンスな情景は、まるで夢から覚めて思い出す夢のストーリーのように何かがずれている。かといって全編が夢ではなく、リアルだと思っていたら夢の回想シーンだったりするので、寝ぼけた状態のように夢かうつつかが渾然としてくるのだ。
映画に出てくるブルジョワたちは、金と暇をもてあましているだけの道化師的存在で描かれている。なので、知ったかぶりしたが、間違いを指摘されるというシーンが何度も何度も出てくる。個人的には、「スルシック?ああ、あれね・・・」が気に入った。
食事直前で邪魔されるシーンが延々と続き、ラストになってようやく食事にありつけたと思ったら衝撃のラストになる。まるで、夢の中で願いが叶うと、現実で不幸なことが起きると暗示しているかのようだ。
星新一のショートショート集のような軽いタッチで描かれた不条理なシーンが連続するシュールレアリズム映画の代表的な作品。
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