シズヲ

座頭市血笑旅のシズヲのレビュー・感想・評価

座頭市血笑旅(1964年製作の映画)
4.5
座頭市&赤ん坊という題材そのものはちょっとあざといが、描写や演出が軽妙なおかげで有り余る魅力に溢れている作品。毎度拘ってる風景のカットの構成は勿論、赤ん坊を連れた道中旅の様子が微笑ましくて楽しい。赤ん坊のおしめを替えてあげたり、いっつぁんが乳を吸わせてあげたり、赤ん坊を抱きかかえながら賭場に入ったり……そんな感じにユーモラスで面白い場面がテンポ良く続くので飽きない。珍しいタイプのヒロインも良いキャラで、いっつぁんとの夫婦漫才めいた掛け合いが見てて面白かった。

次第に赤ん坊への情に目覚めていくいっつぁんの哀愁も良い味を出している。終盤の「自分のことを覚えてくれるように」と赤ん坊に顔を触れさせる下りの切なさは特に印象深い。知り合った按摩一同の使い方も面白くて、それまで気さくに挨拶してたいっつぁんがラストで敢えて彼らを無視することで赤ん坊と別れた後の心情を描写していたのがグッと来る。本作はただユーモラスなだけに終わらず、赤ん坊に対するいっつぁんの心情を掘り下げて「流れ者の哀愁」をしっかり描いていたのがやっぱり良い。

アクションも強烈かつ秀逸。相変わらずの神業じみた抜刀は勿論、見せ方も工夫を凝らしているのがグッド。赤ん坊のおしめを替えながらの居合いは特に強烈だし、ラストの火攻めもなかなかの迫力。三隅監督の座頭市はいっつぁんの渋さと抜刀の演出が毎度絶妙で安定して面白い。というか本作は1作目「座頭市物語」の次くらいに好きかもしれない。
シズヲ

シズヲ