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キングダム II 第3章/第4章のHALのレビュー・感想・評価

キングダム II 第3章/第4章(1997年製作の映画)
5.0
ヒューマントラスト渋谷で15時間超えの『キングダム』I&IIと『キングダム エクソダス』一気見上映で鑑賞。夢と現実が混濁している可能性があります。善も悪もあることを心得よ。

内容について書きます。といっても、これ何の話?という散乱したエピソードが継ぎ合わされて時には衝突し……という分子の運動を繰り返すような神経外科の人間模様は錯乱を極めている。あたかも破裂するための熱エネルギーが充実していくかのように。

スウェーデンの医学界から追われて、デンマークにやってきた(傲慢な)ヘルマー医師と古参の(これまた独善的な)クロウスホイ医師の対立が一応の中心だが、ヘルマー医師の失敗した脳手術(このエピソードも相当ひどい)のカルテを奪い合ったり、病院長のドラ息子が恋をしている睡眠研究者の女の人に検死済みの死体の頭部をプレゼントしようとしてその頭部が病院内をさまざまに転がっていく様など、言葉にすると悪趣味極まりないエピソードが異様なテンションで進んでいく。その中でも作中でヒートアップしていく善と悪の戦いにおいて幽霊達を救済する善たり続けようとするオカルト趣味の老婆(詐称ですぐ入院してくる)とその息子(太っちょの用務員的な何でも屋、いつも倉庫で酒を飲んでいる)が力を合わせて病院の怪異を解いていくくだりはストレートに解呪冒険物語として胸のすくホラーストーリーになっている。あと、「世界一巨大な癌細胞に侵された臓器」を夢見て末期癌で亡くなった患者の肝臓を自身の肉体に移植する医師など、オカルト、ボディホラー、権力闘争とホモソーシャル、幽霊譚、不倫などエンターテイメントの素材となるような(それでもやはり悪性の)癌細胞が全身に転移していく病院そのものを見届ける物語となっている。最終章では心臓外科の部屋に実際に巨大な心臓が巣食っていたりする。そしてこの病院は全然死なない。医師たちも患者たちもしぶとい。会議室に幽霊が集まっていたりする。

そしてオープニングクレジットで唯一知ってる名前のウド・キアの役どころといったらもう……よくこんな恐ろしく悍ましい役を引き受けたなぁと思って見ていたけど最後にはその役でこのシリーズ最大の泣かせどころを作ってしまうんだから役者って恐ろしい。もう好きなシーンだらけです。15時間ぶっ続けでみて疲労困憊してたはずなのに今劇場で掛かってるうちにまた行きたくなっているのが恐ろしい。或る夢遊病患者のように、また真夜中の映画館に誘い込まれてしまう。
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