千年女優

4ヶ月、3週と2日の千年女優のレビュー・感想・評価

4ヶ月、3週と2日(2007年製作の映画)
4.5
1987年のルーマニア。とある大学の寮で生活する女子大学生のオティリア。長期政権を敷くニコラエ・チャウシェスク大統領の政策で避妊と中絶が禁止される中でルームメイトのガビツァから望まぬ妊娠をしていることを告げられた彼女が、非合法の堕胎を試みる友人の頼みをきくことで多くの葛藤に苛まれる長い一日を描いたドラマ映画です。

ジャーナリスト出身の映画監督クリスティアン・ムンジウが母国で今なお社会問題として残る「ルーマニアの孤児」の原因である悪しき政策下での女性を描いた2007年公開の長編映画で、センシティブな「中絶」の描写が論争を呼ぶもスクリーンに映し出される苦難が多くの人の心を動かしてカンヌ国際映画祭ではパルムドールを受賞しました。

主人公の一日を描く物語で規模こそ大きくありませんが、ジャーナリスト出身の監督らしいドキュメンタリックなタッチで説明的なナレーションや背景描写はせず、不安定なカメラワークでひたすら主人公の動向を追います。彼女の事情はあまりに深刻で、対して取り巻く世界は残酷な上人々は無神経で、延々に晴れぬ憂鬱に襲われる一作です。
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