クリーム

4ヶ月、3週と2日のクリームのレビュー・感想・評価

4ヶ月、3週と2日(2007年製作の映画)
4.0
この映画は、当時のルーマニアの社会情勢を知らないと理解し辛い。知っても?な所もありますが…。リアルディストピアな冷たい雰囲気が想像力を膨らます。観賞後に何故?を考えさせられる作品で、重苦しいが興味深く良かったです。
1987年、チャウシェスク政権下のルーマニアでは中絶は違法だった。が、大学生のガビツァは寮のルームメイト·オティリアの助け借り、闇医者と密会する。ホテルの一室で誰にも知られずに手術を行おうとするのだが、2人はトラブルに巻き込まれるのだった。




ネタバレ↓




望まない妊娠をしたガビツァの為に献身 的に彼女を助けるオティリア。彼女は何故、危険を冒して金策に奔走し、身体まで差し出したのか?ガビツァが糞女なだけに全く理解出来ないのだが、ルーマニア情勢を知って観ると少しだけ見えて来ます。
当時、チャウシェスクの独裁政権下でルーマニアは西側からの莫大な借金返済の為、自国の農作物や工業品を大量に輸出し、自国は食物や物資不足でした。 そして、工場の働き手を増やす必要があり、女性に産めよ殖やせよと妊娠中絶が違法とされた。勿論、避妊具も売ってないから闇で買う時代。違法中絶で、命を落とす女性や産んでも国内情勢が悪く育てられず、捨てられた子供が沢山いて、社会問題になっていた。
恐らく、オティリアは、自身も妊娠していた。あの医者の彼氏や彼氏の親戚とのやり取りで、彼女の様な女性達が生き辛い環境だったのが良く解ります。彼氏の親の前で、タバコを吸う事を非難されたり、オティリアの両親の仕事を蔑まれたり…。オティリアは、彼氏の家から、ホテルに戻る時に吐いていたり、「もし私が妊娠してたら?」と喧嘩腰に話していたので、妊娠してるのかな?と思います。で、あの馬鹿女ガビツァの置かれた状況が自分の事の様に思えた。同じ辛い思いをする女性として、友達として助けたかった。さすがに闇医者とヤってあげるのは、意味が解らないけど、それ程、彼女達の状況は追い詰められていたんじゃないかと思いました。
ガビツァが最低女の設定なのは、映画を観て、何か引っ掛かって欲しくてわざとイラつく女にしたんだと思う。何故あんなに嫌な女の為にそこまで?と考えさせる為に。
堕胎成功後も酷い有り様で、自分が産み捨てた小さな胎児をそのまま放置し、それをオティリアに処理しに行かせ、自分はチャッカリ腹が減ったとガッツリ肉料理を注文しレストランで座っていた。あの小さな胎児を見た後で良く肉料理食えるな?ヤバい女だ。そんなガビツァを見つめるオティリアの顔が何とも言えないのだが、そこで映画は、THE END。
ガビツァは、また同じ事しそうだ。
後、あの闇医者は、若い子とヤる為に患者の中絶を手伝ってる変態野郎だったんだろうな?男も抑制されてただろうし…。
チャウシェスクの独裁政権下で、女性達の過酷で生き辛い時代の1コマを覗いた様な貴重な作品でした。面白かった。
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