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4ヶ月、3週と2日のodyssのレビュー・感想・評価

4ヶ月、3週と2日(2007年製作の映画)
4.0
【迫真性に満ちた佳作】

中絶が非合法であった共産主義時代のルーマニアのお話です。

未婚で妊娠してしまった若い女性がいかに法や世間の目をかいくぐって中絶するかというところに眼目があるかと思いきや、実際にはその女性のために奔走する友人の女子学生が主人公になっています。というか、肝心の妊娠した女の子は実にいい加減で、見ていても腹が立つのですが、まあ世の中というものはこういうもので、頑張らなければいけない本人が何もせず、回りの人間が代わりに四苦八苦する羽目になる。そういう映画なのだと思えば、暗い中にもユーモアが漂っている作品という見方もできなくはありません。

とはいえ、奔走する女子学生と妊娠した女子学生だけでなく、ヒロインのボーイフレンド、および彼の家族のお話も出てきており、ヒロインは実にさまざまなしがらみのなかで生きているのだな、と痛感させられます。無論、生きている充実感というようなものではなく、否応なく動きまわらなくてはならない不快感で、そうした不快感の中でようやく生きている実感が湧いてくる逆説、とでも言うのでしょうか。

東欧の都市の夜は暗く、下手なホラー映画よりよほど不気味です。そうした夜を歩き回るヒロインの姿と心情こそ、相手の弱みにつけ込む悪い中絶医の存在と並んで、この映画に迫真性を与える力となっているのだと思います。
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