いの

4ヶ月、3週と2日のいののレビュー・感想・評価

4ヶ月、3週と2日(2007年製作の映画)
4.3
ダルデンヌ兄弟やミシェル・フランコなどと共に『母の聖戦』の共同製作者のなかのひとりとして名を連ねていたことを知ったときから、いつか観たいと思っていたクリスティアン・ムンジウ監督作品。もうすぐ新作『ヨーロッパ新世紀』が公開されます。


台詞ではなく映像で、鑑賞者が徐々に理解していくのがいい。監督はルーマニアの方だということしか私の頭のなかには残っていなかったことが幸いし、観ながら、これはだいたい何年代あたりの話なんだろうなとか、ルーマニアだからきっとまだナントカ政権下の話だろうなとか、徐々に自分で想像してわかっていくことが、自分にとってはとても良かった。


細長い廊下を女性が歩いている場面が繰り返される。その映像が本当にとてもよくて、彼女の姿はだいたいにおいて暗く影のようになっていて、その時の心境を想像できるし、その細長い廊下が何処なのかもちょっとしてからわかるのも良い。主人公の大学生は、ルームメイトの女性のある出来事に巻き込まれていくんだけど、その切羽詰まった様子が、切羽詰まりすぎていて、観ながら息が苦しくなる。ルームメイトは自分のことなのにどこか他人事だし、自分のことなのにちゃんとしてなくて友人頼みだし、自分のことなのにビニールクロス忘れるような子なのに、どうして主人公の女性があそこまで頑張らなきゃならないんだと思うけど、乗りかかった船に乗ってしまったらもうどこかでハラを括るしかないわけで、主人公の女性にとって、それは女性として他人事にはできないわけで。


彼の母の誕生日会の席で大人たちの会話のなかでのどうしようもない感じももの凄くよくわかったし、真っ暗な夜道を背中からカメラが追っていく場面にもどうか何事も起こりませんようにと祈ってしまったし、主人公の女性が道で嘔吐する1分前に消化器系の調子が悪いわたしも嘔吐してて妙なところでシンクロしてそこだけは笑っちゃったし、本当に凄い映画でした。


読んでくださった方は、わたしが何を書いているのか全くわからないと思うんですけど(それなのにここまで読んでくださった方は本当に有難うございます)、とにかくあらすじとか知らないで観て欲しくて、観たあとで他の方々の素晴らしいレビューをじっくり読んでほしくて、いつも以上にわけわかんないと思うのですがご容赦いただければ幸いです。以上!
いの

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