GASS

4ヶ月、3週と2日のGASSのレビュー・感想・評価

4ヶ月、3週と2日(2007年製作の映画)
3.8
第60回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品。
1987年独裁政権下のルーマニアを舞台に、妊娠した友人のために法律で禁止されている中絶を手伝う1人の女性の物語。

この作品、とにかく印象的なのは長回しのカットがものすごく多いこと。
特に彼氏の家での夕食シーンは、時間を測ってはいませんが一体いつまでカメラを回し続けるんだろうと観ているこちらが不安になってしまうほどでした。
観てから私なりに解釈したのですが、あれは主人公の女性が早くこの場から出て行きたいのに中々動けないというその時の不安や苛立ちをカメラで表現していたのでしょう。
その後も彼女の不安な気持ちを表す時には定点固定の長回しカットが多用されていたのですが、一度見たら絶対に忘れられないほどの強烈な余韻を残しました。

主人公の女性は、何のメリットも無いはずなのに、ひたすら友人のために動き続けます。
違法行為と知っていながらなぜそこまでと思いましたが、その答えは彼氏との会話の中にあったのではないでしょうか。
いつ自分も友人と同じ立場になるか分からない。
病院にも行けず彼氏も頼りにならない、そんな時に頼れるのは今目の前で困っている友人だけだと。
彼女を突き動かしていたのは友情なんかではなく妊娠に対する恐怖、自分の未来に対する恐怖だったのでは無いかと感じました。

観ていて陰鬱とした気持ちになることは間違いありません。
エンドロール中の明るい歌が、より一層の不快感を感じさせましたが、忘れることの出来ない強烈な作品でした。
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