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GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 インターナショナル・ヴァージョンのkuuのレビュー・感想・評価

4.1
『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊 インターナショナルヴァージョン』

製作年1995年全編英語吹替版1987年。上映時間83分。

士郎正宗のSFコミック『攻殻機動隊』を押井守監督がアニメーション映画化。

西暦2029年、高度に発達したネットワーク社会において多発するコンピューター犯罪、サイバーテロなどに対抗するため結成された非公認の超法規特殊部隊『公安9課』(通称『攻殻機動隊』)の活躍を描くぅジャ・ジャ~~ん。

ヒロインの草薙素子通称『少佐』をスカーレット・ヨハンソンが演じたハリウッドで実写映画は既観ですが、アニメ版を観てなかった。
情けないことに外国人の友達から借りた映画作品の中に入ってて鑑賞しました嗚呼情けない🥺。
本作は、日本、米国、欧州で同時期に公開されて、当時、特に米国のビルボード誌のビデオ週間売り上げ一位を記録するなど全世界でヒットしたそうです。
日本の民謡をイメージさせながら、どこか怪しい響きも感じさせる不思議な音色の主題歌が日本らしいと、知人が鼻息荒くTELで話してました。
科学技術が高度に発達した近未来の日本でサイバーテロや暗殺に対抗する内務省の公安警察に所属し、完全にサイボーグ化された身体を持ったヒロイン草薙素子(少佐)の活躍を描くこの作品てのは、米国の映画や小説作品の影響を受けていながら、現在においては逆に米国の映画に影響を及ぼすちゅう、日本と米国のアニメを通した文化交流の結節点のような役割を果たしてる。
って知人から云わしたらスゴいことらしいし小生もそう思う。

本来文化交流ちゅうのは二国間のパワーバランスに大きく左右されるもので、
政治的・経済的なパワーのデカイ方が他方に一方的に文化の押し付けを行い、他の文化を歪めてしまうことは歴史的にみてもよくある。
特に現代のグローバリズムは米国文化
的帝国主義ちゅうクソ面があり、そのために批判されることも多い。
せや、この作品は、その面でいやぁ非常に恵まれたケースなんじゃないかな。
なぜなら、本作品は日本と米国の二国間の不均衡な文化的・経済的なパワーバランスは依然として存在しとるが、世界からしたら名もなきグローバリゼーションの結果、人気を得ているからっす。
ショボい日本政府の公式な後押しや、米国のディズニー帝国大資本制作会社によるコマーシャル活動や、その他、戦略があったわけじゃないし、世界の市場から見ると比較的小規模な日本アニメ制作会社による作品が、こない商業的に成功をおさめとるし、米国文化に対しても絶大な印象を与えとる。
本作が世界中で多くの人々を惹きつけた理由の一つはなんやろなぁ。
欧米の多くのSFの物語に登場してきよるサイバースペース(脳に直接リンクすることによって入り込める、電気的に生成され、物理的に居住可能なもう一つの現実のことで、すなわち、『通常』空間に存在する物理的な身体からは切り離された再編成された『人格』が居住する場)とかサイボーグとかのモチーフの融合、
ほんでもって日本的宗教観を背景としたサイバースペースの概念の解釈やら映像化の方法が独特であったからやと思う。
サイバースペースちゅう概念はこれまで小説や映画、ゲームとか様々な芸術形式に取り入れてて、本作においてもメチャに効果的に導入されている。
攻殻機動隊世界内じゃ人の身体の
一部あるいは全部が人工的なものと交換可能で、脳はサイバーネットワークに直結されている。
身体だけじゃなく記憶でさえも交換可能な環境で、人々は己のアイデンティティーに関して不安を抱えながら生きてる。
この作品は、サイバースペースやサイボーグ技術が高度に発達した社会で、『アイデンティティー』や
『個性』、あるいは
『人間』ちゅう概念がどのように変化していきよるのか、ちゅう問いを人類に投げかけている。
ほんでもってオリエンタリズムについて新しいイメージを提示することに成功している点もスゴい。
これが可能になったのは、この作品が日本のアニメちゅう、どっちも米国文化においては主流じゃない部類に属すモンやからやともの考えれる。
こないな事柄が考え抜かれたモンかどうかは置いといて、
市場戦略として作品の持つサブカルとしての特性が海外の批評家の関心を引いて、学術的な領域で議論が行われるよう誘導することに成功したんは疑いようがあらへん。
ある意味、今作は海外の観客が日本のハイテク・ポップカルチャーに抱く期待に過不足なく応え、彼らのオリエンタリズムに対する欲求を表層的なレベルでも深層的なレベルでも満たすことのできる典型的な作品やと云える。
特にサイボーグ体の女性主人公という表象は、ダナ・ハラウェイのフェミニストサイボーグ理論を適用したいと願う批評家や研究者にとっては格好の題材となるのは間違いないんちゃうかな。
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