櫻イミト

喜劇 女は度胸の櫻イミトのレビュー・感想・評価

喜劇 女は度胸(1969年製作の映画)
4.0
森崎東監督の長編デビュー作(当時42歳)。倍賞美津子の初主演作(当時23歳)。

のっけからロケーションの凄さに心を鷲掴みにされる。旧羽田空港の国際線に向けて立ち並ぶ"Canon"や"AIWA"、"YKK"の巨大ネオン看板、その真下にあるオンボロ町工場が本作の舞台である。’70万博EXPOを翌年に控えた日本のリアルな姿がワンカットに収められている。

時代は反体制運動真っ盛り。フォーク喫茶で”くそくらえ節”、”フランシーヌの場合”とプロテストソングの合唱シーンも登場するが、本作の労働者たちはインテリたちとは連帯しない。女と男がそれぞれの恋や欲望に勝利すべく個的闘争を繰り広げ、そのカオスの末に(監督が言うところの)”劣等人間たちの連帯”が生まれるのだ。

森崎監督はデビュー作から人間のごった煮を作っていたのだと感銘。具材たる役者陣もクセのある味わいを放っていた。手が付けられないほどアナーキーな渥美清。半田ゴテで黙々と内職を続ける姿に迫力が滲み出る清川虹子。倍賞美津子の新人らしからぬたくましさは他の女優にはない独特な魅力があった。引き続き森崎監督作品を追いかけてみたい。

「ああ、豚だよアタシは」清川虹子
「コールガールだって人間だと言いたいのよ」沖山秀子
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