映画狂人

薄れゆく記憶のなかでの映画狂人のレビュー・感想・評価

薄れゆく記憶のなかで(1992年製作の映画)
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時の流れと共に薄れゆく記憶のなかで過度に美化された初恋の美しさと青春の蹉跌、もう二度と戻れない淡い青春の日々を追体験出来る焦れったい初恋物語。
昼下がりの教室で揺らめくカーテン、自転車の二人乗り、花火、浴衣姿の夏祭りデート…などなど学園物にありがちな胸キュンシーン満載。
控え目なヒロイン菊池麻衣子の可愛らしさにやられた、物理オタクの眼鏡っ娘が眼鏡外したら美少女というド定番の萌要素に一発KO、こんなの男はみんな好きでしょう。
相手の男子がたこ焼き屋でバイトしてるんだけど、そういう何気ない日常の描写に日本の夏らしさが垣間見えて心地良い。
終盤は韓国ドラマのようなベタな展開になるが、ヒロインのパーソナルに関する伏線を序盤からそこかしこに張っているので自然と受け入れられる。
監督の篠田和幸はこの知られざる名作を一本だけ撮り映画界から姿を消してしまった、今年還暦を迎えたとの事でどうにかして存命中に二作目の映画を撮って欲しいという思いもあるが、晩節を汚す事なくたった一本の珠玉の小品を後世に遺す方が余程有意義なことなのかも知れない。
撮影は全て監督の出身地である岐阜県岐阜市で行われたそうで、懐かしい田舎の風景が郷愁を誘う。
監督含め全ての出演者が新人という事で演技や演出に拙い部分は多々あれど、そのぎこちなさが初々しい初恋物語にピタリとハマり涙なしには観れない。
夜空に輝く打ち上げ花火のような思春期の一瞬の煌めきが眩しくて眩しくて胸が締め付けられる、『この窓は君のもの』を観た際に覚えたノスタルジックな感覚に非常に近い。
夏の思い出の映画がここにまた一本増えた。
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