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チャドルと生きるのRのレビュー・感想・評価

チャドルと生きる(2000年製作の映画)
4.4
ものすごい気分にさせられる映画だった。チャドルとは、イランの女性が外出するときに身につける、体をすっぽり隠すための真っ黒の布のことだそう。冒頭、分娩室の小窓から、看護婦さんが顔を覗かせ、ソルマズ・ゴラミの付き添いの方、おめでとうございます、女の子ですよ。すると妊婦の母にあたる婆さんが、間違いでは? 超音波検査では男の子だ、男でないと困る、娘が役立たずだと離縁されてしまう…これでは大変だ、と嘆く象徴的なシーンから始まり、たまたま彼女がすれちがう全然つながりのない女たちのエピソードに移行。今度は、何らかの罪で服役していたが、刑務所から逃げてきた女たちのエピソードが展開…何の罪でつかまってたのかも全然分からないまま、田舎の故郷へバスで向かおうとする女が、身分証も外出許可証も学生証もお金もないから、バスチケットがなかなか手に入らない様子が描かれ、そうこうしてたら、またすれ違った別の女のエピソードに移行。次は何やらつわりで苦しんでる女が、町中誰かを探してるシーンが展開…という具合に、リレー形式で、ある1日に女たちに起こるエピソードを繋いでいく。あと、出て来るのは、自分の娘を捨てようとして嘆いている女と、気丈そうな売春婦。何にもバックグラウンドが明かされないまま淡々と進んでいくので、特に前半は、何が起こってるのか、何がテーマなのか、非常にわかりづらいんやけど、だんだんだんだん分かってくる。女性にとってイランで生きることがどれほどつらいか。女性がどれほど抑圧された生活を送っているか。そして、それとは対照的に、男性は自由に街を行き交い、第2第3の妻をもらい、多少の罪を犯しても頼み込んだら見逃してもらえたり。その歴然たる差に、気分がどんどん重くなってくる。ほんまにひどいことだ…と思いながら、同時に、巧みなストーリー展開に魅了もされる。そして、最後に、冒頭と同じく、ソルマズ・ゴラミと小窓が登場し、ひとつのストーリーの環が完成する。その環は、明るいはずの出産の知らせから、どこにいたったか。それが2000年当時のイランを生きた女性の厳しい人生を物語っているようだった。ちなみに、2009年に公開された別のイラン映画、別離を考えると、女性の立ち位置が大きく変化しているのに驚かされる。年々女性の社会進出が増えているというのを耳にしたことはあったが、約10年の間で、ここまで変化したのかと、びっくり。これ見てると、日本の女性差別問題は、表面化していないだけで、女性にすら簡単には気づかれないまま、根深く存在し、しかももっともっと大変にややこしいことになってるなーと思った。ほんとに大変な国だ。短いので返却するまでにもう一回見るのもアリかも。
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