つるみん

秋のソナタのつるみんのレビュー・感想・評価

秋のソナタ(1978年製作の映画)
3.7
【愛しきママへ】

ゆったり流れる室内で行われる会話劇であるが、いつものベルイマンとは一味違う。被写体全身を映し、部屋の構図まで分かる引きのショットだけでなく、役者を信頼した顔面のクローズアップにより「衝撃的」な画が出来上がる。本来の撮影手法の意味を超越したワンシークエンスにただただ震えるしかない。それは横顔から放たれる美貌と正面から受け取れる狂気。イングリッド・バーグマンとリヴ・ウルマンの共演だからこそ成し遂げられた奇跡のようなショットである事はまず間違いない。母娘の愛憎、そして人間のエゴの部分がとにかく搾り出される。

また本作がイングリッド・バーグマン最後の出演作という事を知ると、さらにこの作品の価値が上がる。1人の女優としての最期が本作というのは、これはもう言葉が出ない。まさに生き様。そしてレジェンドという名に相応しい。伝説とはこういう事なんだなと納得させられる。
しかしそんな伝説に対して、一歩も引かずに演じ切ったのがリヴ・ウルマン。ベルイマン作品の常連ではあるが、彼女の存在が大きすぎる。地味で素朴なキャラクターにも関わらず、どうしてあそこまで画を支配できるのか。最近だとアニャ・テイラー=ジョイを観た時のあの感覚に近しい。しかし大きく違うのは、アニャの場合だと出た瞬間から支配する女優であるが、リヴの場合だとワザと隠す能力を持っていて、ここぞというシーンでそれを発揮させる。あのピアノのシーンは映画史に残るワンシーンとしてどこかに記載しておくべきだ。

デジタルリマスター版として、Blu-ray化して大正解な作品であった。これを綺麗な画質で観れる、それだけで感謝である。
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