うにたべたい

鯨神(くじらがみ)のうにたべたいのレビュー・感想・評価

鯨神(くじらがみ)(1962年製作の映画)
3.4
大映では初となる巨大生物が登場する映画作品、らしいです。
巨大すぎるために地元漁師から"鯨神"と呼ばれ恐れられている化け鯨と、その鯨に父と兄を殺され、打ち取ることに執念を燃やす若者「シャキ」の物語。
あらすじを読むとエイハブ船長とモービーディックのような話かと思いきや、話中びっくりするほど鯨が出てこないです。
何度か鯨に挑戦し、仲間が殺されたりしながら何とか打ち取る展開みたいなものを想像して見てみると、意外にも鯨が出るのは最初と終盤のみという、基本的に人間ドラマが中心の内容でした。

主人公は村の若者「シャキ」と、「紀州」と呼ばれる流れ者の捕鯨師。
2人は反目しあっているのですが、最終的には紀州がシャキに力を託す形で、2人で鯨神に打ち勝つ様な展開となります。
ただ、そこまでの紆余曲折が不必要に遠回りに感じました。
序盤に村の権力者が鯨神討伐の褒美に土地と娘を差し出す展開があったり、その権力者の娘がシャキを気にするような素振りを見せたりするのですが、それらはストーリーの根幹と関係無いんですね。
映画の雰囲気は暗く、会話に妙な間があってテンポも悪く感じました。
モノクロの映画であることもあり、途中猛烈に眠くなったので注意が必要だと思います。
シャキと紀州のやり取りでストーリーが進む部分は良いんですけどね。
どうも恋愛要素がノイズに感じてしまいました。
私的には本作はふんどし姿の漁師たちが、ワーワー言っているだけで良かったと思います。

ただ、ラストの鯨神と戦うシーン、ここはすごく良かったです。
投じられたモリを全身に雨霰のように受けながら勇猛に海を行く巨大鯨に飛びつく荒くれ男・紀州。
そのまま海に潜り、あわや取り逃がしたかと思いきやその姿を現す、や否やシャキが飛びかかり小刀を突き立てる様は勇猛果敢。
こういう巨大生物に小さい人間が立ち向かうような特撮映像を久しぶりに見ました。
このシーンのために本作は見ていいと思います。
なお、鯨神は等身大のモデルを800万円投じて作ったそうです。
この頃の大映は勢いがあって良いですね。