櫻イミト

人間魚雷回天の櫻イミトのレビュー・感想・評価

人間魚雷回天(1955年製作の映画)
3.5
「きけ、わだつみの声」(1950)「雲ながるる果てに」(1953)に次ぐ、学徒兵の実話を描いた反戦映画。原作は元海軍中佐の著した同名ノンフィクション。監督は「世界大戦争」(1961)の松林宗恵(元海軍士官)。

1944年、山口県の海軍基地。特攻兵器「人間魚雷 回天」の隊員に選ばれた4名の学徒(木村功、岡田英次、宇津井健、沼田曜一)の出撃までの姿を追う。。。

冒頭、学徒兵たちの眼の前で人間魚雷 回天の爆破実験が行われる。この特公兵器に一人づつ乗り込み、敵艦隊に体当たりして自爆するのが彼らの任務だ。文章や写真ではなく映像で見ることで、いかに非人間的で常軌を逸した状況だったかを思い知る。そこから、否応なく訪れる死に向けて映画は淡々と進む。

映画としては構成も映像も決して器用な仕上がりではない。最初から最後までずっと重苦しい。結果的に、死に向けて成すすべなく日々を送った彼らの心境が、身に染みるように伝わってきた。

「雲ながるる果てに」で非人道的な参謀を演じていた岡田英次が、本作では立場も人間性も真逆の役を演じていた。
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