メッチ

グッドフェローズのメッチのレビュー・感想・評価

グッドフェローズ(1990年製作の映画)
4.8
少年は、倫理観が育たないうちから、大統領よりもギャングになるのが夢だった。

本作は実際にギャングスターとして生きたヘンリー・ヒルの半生を描いていますが、どういう気持ちでマーティン・スコセッシ監督は彼を描いたのでしょう?
ヘンリー・ヒルの母はシチリア人のためその血を引いていて、父はアイルランド。そして、そんな彼が育った場所はアメリカ。アメリカ人からみればあまりいいようには思われていなかったのではないのでしょうか?
別作「グリーン・ブック」の運転手兼ボディーガードのトニーもイタリア出身のアメリカ移民だったために、あまりいい境遇ではないところをみてしまうとそう思わされます。

では、そんな環境下で育ったから、身近にギャングがいたからギャングスターに憧れたのでしょうか?
それは、ただ単純に倫理観も育ちきれていない年齢から、何が良くて何が悪い行いか?その判断ができないうちから、スーパーヒーローやスター選手に憧れるようにギャングスターに憧れたのでしょう。作中の序盤に「大統領よりもギャングになるのが夢だった」というセリフの意味はそのように思いました。
そして、そんな倫理観も育たない彼は、歳をとってもギャングスターに憧れた頃の少年の心を持ったまま、本作の終盤であのような判断をしたのだと思います。

"周りからみて"、何が良くて何が悪い行いか?というよりも、
"自分からみて"、何が良くて何が悪い行いか?というように。

彼と似た境遇でもギャングにならなかったマーティン・スコセッシ監督は、あのセリフを落とし込んできたのは、そういう想いみたいなものがあったのではないか?
私はそのように思いました。

そう考えるとあのセリフは、夢を叶える信念みたいな格好良さがありつつも、逆に夢を叶えるためなら何でもしてしまう狂気性という複数の意味もあるように思えて、"凄味"を感じますね。
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