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血ぬられた墓標のhorahukiのレビュー・感想・評価

血ぬられた墓標(1960年製作の映画)
5.0
美しすぎる…
イタリアホラーの父と呼ばれる巨匠マリオバーヴァ監督の本格的なデビュー作にして代表作。

マリオバーヴァはめっちゃ偉大な監督でして、あのダリオアルジェントの師匠でもあり、この人がいなかったらイタリアにホラー映画はなかったかもしれないとまで言われている正に偉人です!

あらすじ…
18世紀、アーサ王女は実の兄により魔女として告発された。針のついた鉄仮面を顔に打ち付けられ、アーサ王女は一族に対する呪いの言葉をはきながら火あぶりにより処刑される。
それから二世紀後。偶然通りかかった医師の血がアーサの死体に触れたことでアーサが蘇り、一族の末裔に復讐を開始する…という話。

1シーン1シーンがとにかく美しい…。
白黒映画で画質もあまり良くないのですが、引き込まれるシーンの連続で、どこを切り取っても絵画として飾れるレベルの完成度。霧の中を進む馬車だったり、暗闇から浮かび上がる顔だったり。CGを全く使わないトリック撮影も「どうなってんの?」と思ってしまうほどのクオリティ。微妙な陰影の使い方や、光と影のコントラストで魅せる演出は素晴らしいの一言です。撮影監督出身のマリオバーヴァだからこそと言った感じですね。

でも、美麗な映像によって抽象的なことを表現するような高尚な作品ではなくて、本作はゴシックな怪奇ムード溢れる映像表現に全力を注いだ、まさに「怪奇と幻想」という言葉がぴったりなクラシカルなエンタメホラーです。

アーサ王女は、一族の末裔で自分と生き写しなヒロインのカーチャに取って代わろうとします。アーサは魔女であり吸血鬼でもあるので、眷属を使い、あの手この手でカーチャに迫ります。カーチャを守ろうとするのが主人公のイケメン医師とカーチャの弟。魔女の復活を巡ったこの2陣営の対決が本筋です。

一族の城にずっと暮らしてるヒロインのカーチャは抑圧を感じていて、城とか一族とかに縛り付けられてる現状をぶち壊して、自由になり解放されたいと心の中では思ってるんですよね。でも、現状を壊すこと=一族の崩壊を意味することになる。なので、一族の崩壊を狙うアーサ王女とヒロインのカーチャは表裏一体の関係であり、読みようによってはカーチャの自由への渇望そのものがアーサ王女であり、今回の事件の元凶ともとれる。そうするとオカルトホラーだった本作がサイコホラーの要素をも持つようになる。こういった解釈の余地を残してるのがうまい。

そして、カーチャからしたら結末は2つしかないわけです。自分の裏の存在であるアーサ王女が一族を崩壊させ自由になるか、一族に縛られたまま暮らすのか。でもそこに新しい風として現れる主人公というのがおとぎ話っぽくて大好き。

本作が初バーヴァだったんですけど、一気にファンになっちゃいました!偉大な監督なのに、DVD化されてる作品はもれなく廃盤でプレミア価格になってるし、VHSどまりのやつも…。Blu-rayボックスみたいなの出て欲しいです! とりあえず見れるやつから少しずつ見ていこうと思います♫

R2.8.24 夏のホラー秘宝まつりで何度目かわかんないけど再鑑賞
4.6→5.0
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