タランティーノ、北野バイオレンスの源泉をチラリ
舛田利雄
「紅の流れ星」
時々、50〜60年代の日活が観たくなります。
その時代の日活といっても中平康の「狂った果実」や鈴木清順の「殺しの烙印」のような芸術的な香りを漂わせた作品ではありません。
ここはやはり井上梅次や齋藤武市、あるいは舛田利雄あたりを。
80年代のわたくしなど舛田利雄の名前はどうしても「宇宙戦艦ヤマト」シリーズや「トラ、トラ、トラ」「二百三高地」などの大作が最初に頭に浮かびますが舛田利雄といえば何をおいても日活時代です。
中でも「錆びたナイフ」や「赤い波止場」の石原裕次郎主演の舛田利雄作品ではなく、渡哲也主演の「無頼より〜大幹部」あたりの出鱈目さが格別ですね。
そして今回初めて観ることが出来た「紅の流れ星」がこれまた素晴らしい。
オープニングの口笛と首都高速の暗殺、そして酒場で渡哲也がいきなり始める軽快なダンス。
まさにタランティーノの「パルプ・フィクション」の母胎かと思わせるリズム感です。
かと思えば渡哲也が浅丘ルリ子を延々と口説く件は明らかにフランス・ヌーベルヴァーグの見事な換骨奪胎。
やがて浅丘ルリ子が元婚約者の姿を認める死体安置所の場面から画調が急に静謐なノワール風に変貌します。
弟分杉良太郎の仇を討つべく宍戸錠に銃弾を浴びせるシーン。
銃声を抑えるために羽毛枕を介して発泡しますが、あの北野武流バイオレンスの源泉はやはり歴史に根ざしたものだったのだ、と思わす唸ってしまいました。
一見すれば、この通俗的でチープなハードボイルドで監督舛田利雄は主人公にいかなるケジメをつけさせたのか?
未見の方のために触れずにおきますが少しでも映画に通じている方なら90%以上の確率で見当がつくと思います。